〈登場人物〉
シンデレラ
おばあさん(魔法使いのおばあさん)
白雪姫
かぐや姫
アリス(不思議の国のアリス)
怪人メギオドン
○明転
岩場。下手にメギオドン、上手にシンデレラ、白雪姫、かぐや姫、アリス。
息を切らしながらメギオドンと対峙しているシンデレラ達。
シンデレラ「何て強さなの・・・」
アリス 「やっぱり無理ですよー」
白雪姫 「今まで頑張ってきたのに・・・」
かぐや姫 「おい、メギオドン! もう少し手加減してもよかろう」
メギオドン「手加減だと? 馬鹿な事を言うな。これでも十分に手加減をしてやっているつもりだ。もうお前達の実力のなさには付き合いきれん」
シンデレラ「私たちはあなたには負けない!」
かぐや姫 「そうじゃ。やっとみんなの気持ちが一つになったのじゃ」
白雪姫 「諦めない・・・絶対!」
アリス 「ヒロイン戦隊は強いんです!」
メギオドン「威勢だけはいいようだがこれが現実だ。ヒロイン戦隊! お前達は俺には敵わない。負けを認めろ!」
シンデレラ「地球の平和は私たちが守る! だから負ける訳にはいかないのよ!」
メギオドン「ふんっ、言いたい事はそれだけか。さらばだ・・・うおぉぉぉぉぉぉ」
力をためるメギオドン。強力なエネルギーをまとっている。
客席で一緒になって見ているおばあさん。そのまま舞台中央に出て、魔法をかける。
おばあさん「ストーップ!」
その瞬間、一同の動きが止まる。
おばあさん「あー危ない、危ない! いやーシンデレラ達ピンチだね。この先、どうなるか続きが気になるじゃないー早く来週にならないかねーーって月9かい!(観客に気づき)あ、どうも。え、あたしかい? あたしは魔法使いのおばあさん。周りからは石原さとみーとか有村架純ーとかって呼ばれてる・・・うんうんうんうん、あ、ごめんね、ごめんごめん少し盛っちゃった。反省はしてるのよ、本当に。本当よ、もういやだねー。あ、みんなはどうしてシンデレラ達が怪人と戦う事になったのか知らないんだね? そうかい、そうかい。それじゃあ今日は特別大サービスだ。今から一ヶ月前の様子をみんなに見せてあげよう。え、そんな事ができるのかって? 大丈夫、大丈夫。魔法でパパッとやればなんとかなるから。だからねーみんなも彼女達を応援してあげて頂戴。じゃあいくわよ。テクマクマヤコンテクマクマヤコンー時間よ戻れ!」
●暗転
一ヶ月前。シンデレラの屋敷。
そわそわと落ち着きがないシンデレラ。下手からおばあさんが
登場。
シンデレラ「もうーばあや!」
おばあさん「はい、はい今帰りましたよ」
シンデレラ「どこ行ってたの? ずっと探してたのよ」
おばあさん「シンデレラ、大きな声を出さないで。この歳になると耳のあたりがキンとするのよ。キーンって」
シンデレラ「ごまかさないで。で、どこ行ってたの?」
おばあさん「・・・どこってそりゃあ、あたしにだって色々ありますよ」
シンデレラ「色々って?」
おばあさん「そうだねーパチンコ、競馬、麻雀、賭博、あとは・・・」
シンデレラ「ちょっと待ってばあや!」
おばあさん「まだ言い終わってないよ」
シンデレラ「言い終わってなくていい。あのね、今日はファミリー劇場なの。その発言は小さいお子様達にものすごーく良くない影響を与えてしまうわ」
おばあさん「何だい、そのファミリーなんたらって?」
シンデレラ「(不思議そうに)ごめんなさい、私もよくわからないんだけど勝手に口が・・・ってそんな事言ってる場合じゃないのよ!」
おばあさん「騒がしいね」
シンデレラ「とにかく謎の怪人が現れてからこっちは大変だったんだから」
おばあさん「謎の怪人?」
シンデレラ「突然、他の惑星からやってきた凶悪な怪人で、何でも地球を征服するーって宣言しているらしいの」
おばあさん「・・・」
シンデレラ「いずれこの国にもやってくるに違いないっていう噂が流れ出して、国民も大騒ぎよ。だから王様も兵士を鍛え上げて、戦いの準備をしているみたいなんだけど・・・」
おばあさん「(遠い目をしながら、どこか気取って)そうかい・・・遂に現れたんだね・・・」
シンデレラ「・・・ん? 何かばあやの『私は全てを知っている感』がすごいんだけど」
おばあさん「(ドヤ顔で)私は全てを知っている!」
シンデレラ「やっぱりそうなんだ! うん、そんなにドヤ顏で言わなくていいから、早くどうすればいいか教えて」
おばあさん「それは無理」
シンデレラ「どうしてよ」
おばあさん「そんなに簡単に教えたらもったいない」
シンデレラ「何よもったいないって。そんな事言ってる場合じゃないでしょ。ばあや、今は地球の危機なのよ!」
おばあさん「それはわかってるよ。けどいいのかい? 全てを事細かく話すと大体三ヶ月と二日ぐらいかかるけど」
シンデレラ「手短コースでお願いします」
おばあさん「まぁとにかくだね、王様も必死になっているようだけど、兵士では怪人には勝てない」
シンデレラ「そんな・・・でもこの国の兵士は数々の戦をくぐり抜けてきた強者達よ」
おばあさん「それでも怪人には手も足も出ないよ」
シンデレラ「・・・兵士でも敵わないとなると、じゃあ一体誰なら怪人と戦えるのよ」
おばあさん「シンデレラ、これを見てごらん」
おばあさん、巻物をシンデレラに見せる。
シンデレラ「何、これ?」
おばあさん「あたしのご先祖様がずっと残してくれてたんだ・・・」
シンデレラ「(まじまじと予言書を眺めながら)ばあや・・・これって・・・」
おばあさん「今から200年後の世界の予言書さ。見てわかると思うが、怪人の事が書かれておる」
シンデレラ「そんな・・・未来にも怪人は現れていたなんて・・・」
おばあさん「ここを読んでごらん」
シンデレラ「・・・ウルトラマン、仮面ライダー、ゴレンジャー、スーパーマン、バットマン、アンパンマン・・・字が消えかかっててよく読めないけど、何の事かしら? あとアンパンマンが無性に気になるのはなぜ?」
おばあさん「おそらく怪人から地球を救った英雄達の名前だろうね」
シンデレラ「・・・英雄」
おばあさん「まぁ戦ってる時に、新しい顔とかが必要になってくるんだろうけどねーほらっ、水に濡れると大変だから」
シンデレラ「ばあや、何言ってるの?」
おばあさん「あ、こっちの話。まぁ彼らのような英雄にしか怪人には敵わないって事だよ」
シンデレラ「ちょっと待ってばあや! この予言書が本当かどうかもわからないじゃない。そんなにあっさりと信じていいの?」
おばあさん「実際に今も怪人が現れて同じ状況になってるじゃないか。他に方法がないんだとしたら信じても無駄じゃないよ。それにあたしのご先祖様が大切に保管していた予言書だよ。そこまでして何かを伝えたかったに違いないさ。あたしはねぇ、シンデレラ。この時代にも彼らのような英雄の素質を持つ者がいたっておかしくないと思っている。そんな存在が見つかればきっと怪人にだって勝てるよ。そうは思わないかい?(シンデレラを確認して)・・・って何寝てんだい!?」
シンデレラ「だってばあやの話長いんだもん」
おばあさん「台本で言うとたったの七行じゃないか! てかよくそんな一瞬で寝れたね」
シンデレラ「最近、寝付きがいいの」
おばあさん「あのね、シンデレラ。あたしがこんなに真面目な話をするなんて四年に一度の事なんだよ」
シンデレラ「まるでオリンピックだね・・・ふあぁぁ」
おばあさん「もう、いいっ!」
シンデレラ「あーごめんなさい! 里芋の煮っころがしが美味しいっていう話までは聞いてたんだけど」
おばあさん「そんな話、一度もしてないよ!」
シンデレラ「チッ、外れたか・・・」
おばあさん「ん?」
シンデレラ「冗談よ、冗談! とにかくその英雄の素質を持っている人じゃないと怪人には敵わないって事ね!」
おばあさん「まぁ・・・そういう事だよ」
シンデレラ「けどばあや。それってどうやって判断するの? 普通の人と素質がある人って、なかなか見分けるのが難しそうだけど」
おばあさん「そこはあたしに任せて頂戴。研究に研究を重ねた結果、ある方法を思いついたのさ。まぁ、詳しくは後に説明するよ」
シンデレラ「不安だわ・・・そんな人を見つけるのだって、今からどれだけ時間がかかるか・・・その間に怪人が暴れ出しでもしたら事態は最悪よ!」
おばあさん「ふふふ・・・はっはっはー」
シンデレラ「何、急に気味の悪い笑い方して」
おばあさん「任せなさいシンデレラ! あたしが普段からただギャンブルをしているだけの老人に見えるかい?」
シンデレラ「見えるわ」
おばあさん「即答だね」
シンデレラ「だってばあやだもん」
おばあさん「さらっと傷つくような事を言わないでおくれ」
シンデレラ「ごめんなさい。・・・という事は、ばあやにはその英雄の素質がある人の心当たりがあるって事?」
おばあさん「心当たりはある。あたしも怪人にこの国を滅茶苦茶にされるのを、ただ見ているだけなんて事は嫌だからね」
シンデレラ「頼もしい。ばあや、少し見直したわ」
おばあさん「そうだろシンデレラ。あたしもやるときはやるんだから。さっそく呼ぶから、ちょっと待っておくれ」
シンデレラ「呼ぶって・・・今から?」
おばあさん「あぁ。あたしが声をかければ、みんなすぐ集まってくれるよ」
シンデレラ「すごいじゃない、ばあや!」
おばあさん、ポケットからスマホを取り出し電話をかける。
シンデレラ「何、その四角いの?」
おばあさん「スマホだよ、スマホ。あのーi PHONEの一番新しいやつ。・・・6s(シックスエス)? いや7(セブン)だったかな? まぁどっちでもいいんだけどね。(電話が繋がりギャル口調で)あっ、もしー着いた? あのさー今、部屋にいるから上がってきて。え、門番? 大丈夫、大丈夫。適当にあたしのマブダチーとか言って入ってくれたらいいから。うんうんうんうん、じゃあね」
沈黙。じーっとおばあさんの様子を見ているシンデレラ。
シンデレラ「・・・うん、ばあや。一つずつ突っ込んでいいかな」
おばあさん「どうぞ」
シンデレラ「(スマホを指差して)それ明らかにこの時代のものじゃないよね」
おばあさん「ご都合主義万歳!」
シンデレラ「あとその話し方にはだいぶ無理がある。年齢的に」
おばあさん「魔法使いのおばあさん、ドモホルンリンクルで若作りをしています」
シンデレラ「何より声が変わりすぎて気持ち悪い」
おばあさん「電話の時は声が変わるんだよ! それが大人の女のエチケッツ!」
シンデレラ「意味わかんないわよ」
おばあさん「エチケッツ!」
シンデレラ「二回言わなくていい。もうっ、ふざけないで」
おばあさん「シンデレラがしょぼくれた顔をしてるから、慰めてあげてるんじゃない」
シンデレラ「どうもありがとう。でも元気が出るどころかちょっとイラッとしたわ」
おばあさん「仕方ないじゃないーあたしも初めて会うから気を使ってるんだよ」
シンデレラ「え? ばあやも初めてなの?」
おばあさん「あぁ、そうさ」
シンデレラ「大丈夫? 初めて会うんなら、素質があるのかもわからないじゃない」
おばあさん「まぁ、大丈夫大丈夫! 間違いないはずだから!」
シンデレラ「どこからそんな自信が出てくるのよ」
おばあさん「なんか彼らにはこうビビビッとくるものがあったんだよ。ビビビッとね。聖子ちゃんもびっくりさ」
シンデレラ「何て曖昧・・・そして今の若い人は、多分聖子ちゃんを知りません」
おばあさん「とにかく心配しなくても大丈夫。こういう時のあたしの感覚の鋭さったらすごいんだから」
シンデレラ「ますます心配になってきた・・・念のために確認よ。本当にその人達に 英雄の素質があるのね?」
おばあさん「うん、ほぼ100パーセント」
シンデレラ「怪人にも勝てるのね?」
おばあさん「間違いない」
シンデレラ「・・・わかった。そこまで言うなら、ばあやを信じる」
おばあさん「ありがとう、シンデレラ」
シンデレラ「(少し考えて)あれっ? でも初めて会うのにどうやって知り合ったの? 誰かに紹介してもらったとか?」
おばあさん「あーケータイのゲームの中で知り合ったんだよ」
沈黙。
シンデレラ「・・・ん?」
おばあさん「最近はおもしろいのよーほらっ、知らない人たちと一緒に冒険して敵と戦ったりできるし、あたしもうハマっちゃってハマっちゃって・・・」
シンデレラ「ちょっとばあや・・・あまり意味がわからないんだけど」
ドアを叩く音。
おばあさん「おやっ、来たみたいだね。どうぞー」
下手から白雪姫、かぐや姫、アリス、メギオドン登場。
かぐや姫 「失礼する。おーっそなたが石原さとみ殿か。会いたかった」
シンデレラ「え?」
アリス 「さとみさーん初めまして」
白雪姫 「本当にさとみさんと会えるなんて・・・私、嬉しいです」
シンデレラ「ええっ?」
メギオドン「さとみさん・・・正直、俺のタイプだ」
シンデレラ「えぇぇーっ!?」
かぐや姫達、おばあさんの元に群がりワイワイガヤガヤ。
シンデレラ「すみませーん、ちょっとお待ち下さい」
シンデレラ、おばあさんの手を引き下手へ。
シンデレラ「ねぇ、ばあや。あの人達とゲームの中で知り合ったって言ってたけど、英雄の素質があるかは置いといて、怪人と戦うって事、知ってるの?」
おばあさん「あっ、そっち? 石原さとみって何で呼ばれてるのかって事を聞かれると思った」
シンデレラ「うん、もう何か色々いいかなって。もう手遅れな感じだったし。で、どうなの?」
おばあさん「あーっ、それはねー・・・どうしてだい?」
シンデレラ「だってあの人達、全然怪人と戦うぞっていう雰囲気じゃないもの。何ていうか・・・ワクワクしてるみたいな・・・そうそう、例えば今からパーティでもしましょうみたいな」
おばあさん「あーそうだね。うん、パーティをすると思ってる」
シンデレラ「・・・は?」
おばあさん「いやーゲームの中で意気投合しちゃって、今度ここでパーッとやりませんかっていう話になったのよ。で、それが今日だったっていう訳。それにだよ、腹を割って話さないと英雄の素質があるかどうかもわからないじゃない」
シンデレラ「ばあや、英雄を見つけるのがついでになってない?」
おばあさん「そんな事ないよ」
シンデレラ「ただ騒ぎたいだけでしょ?」
おばあさん「そ、そんな事ないよ」
シンデレラ「じゃああの人達は怪人と戦いに来たんじゃなくて、ゲームの親睦会だと思って来てるって事?」
おばあさん「さすがシンデレラ。理解が早い」
シンデレラ「どうも・・・ってバカ!!」
おばあさん「年上に向かってバカはないでしょ」
シンデレラ「どうするのよ、こんな事している間に怪人はどこかで暴れているかもしれないのよ」
おばあさん「そんな事言われても仕方ないわよ。あたしだってね、たまにはゆっくりと自分の趣味に没頭したいなーなんて時もあるんだよ」
シンデレラ「たまにはって、いつもふらっと出て行ったきりほとんど帰ってこないじゃない」
おばあさん「ほぅ、それを言うのかい。王子様とちょーっとうまくいったからって偉くなったもんだね」
シンデレラ「何よそれ、関係ないでしょ」
おばあさん「関係あるよ。大体、ガラスの靴を出してあげたのは一体誰のおかげだと思ってるんだい」
シンデレラ「もうっ! ばあやはいつもその話ばかり持ち出すけど・・・」
メギオドン「まぁまぁ、二人とも喧嘩をしないで」
シンデレラ「あっ、すみません」
おばあさん「騒がせて悪かったね」
メギオドン「いいえ」
シンデレラ、おばあさん、かぐや姫達のところに戻る。
おばあさん「みんな、待たせたね。今日は集まってもらってどうもありがとう。私、石原さとみこと・・・」
シンデレラ「(咳払い)」
シンデレラの方を見て、鬱陶しそうにぶつぶつと小言をつぶやくおばあさん。
おばあさん「(強調して)私、い・し・は・ら・さ・と・みこと魔法使いのおばあさんです。とりあえず、みんな初めて会った訳だし一人ずつ自己紹介をしていこうかね。順番に名前とゲーム以外の趣味を一言ずつ頼むよ」
一歩前に出るアリス。
アリス 「わたしはアリス、よろしくお願いしまーす。趣味はーうさぎを追いかける事でーす」
メギオドン「ほぅ、珍しい趣味だ。何かうさぎに特別な思い入れがあるとか?」
アリス 「うーん、特にそういう訳ではないんですけどーなんかーうさぎって可愛いしー見てると追いかけたくなるんです、あと追いかけてるわたしも可愛いみたいなー」
メギオドン「青春だな」
アリス 「はいっ、せーしゅんです」
かぐや姫 「次はわらわか? うむ、わらわはかぐや姫じゃ。趣味というわけではないが月の者に追われておる」
メギオドン「それはどうして?」
かぐや姫 「いちいち帰って来いとうるさいのじゃ。過保護すぎるんじゃのぅ。もうアラサーだというのにそろそろほっておいて欲しいものじゃ」
メギオドン「色々、深刻そうだ。しかし青春だな」
かぐや姫 「まぁ青春じゃのう」
白雪姫 「あの・・・私は白雪姫と申します。普段は引きこもっていてなかなか外に出る機会がありません。ここに来るまでに太陽の光がまぶしすぎて溶けそうになりました」
メギオドン「趣味は?」
白雪姫 「漫画、アニメ、小説、映画、写真、観劇、カードゲーム、手品、ラジコン、プラモデル、アイドルの追っかけ・・・」
メギオドン「あーごめん、ごめん! 意外と多いな」
白雪姫 「あと・・・」
メギオドン「あと?」
白雪姫 「・・・・・・毒リンゴを食べる事です!!」
沈黙。
メギオドン「・・・その勇気、青春だな」
白雪姫 「青春なんですかね」
アリス 「あのー毒リンゴってー食べても大丈夫なんですか?」
白雪姫 「最初は刺激が強いんですけど、段々慣れてくるとヤミツキになるんです。もう部屋から外に出れなくなりますね」
アリス 「へーっ、そうなんだー」
おばあさん「最後はメギオドンだよ」
メギオドン「はい。俺は怪人メギオドン。宇宙からやってきた。これといって特に取り柄があるわけではないが、趣味は地球を侵略する事だ。なかなかうまく行く事ではないというのはわかっている。しかし、困難だと思う事に挑戦するのも一つの青春ではないだろうか。一歩ずつ確実にをモットーに頑張っていくつもりだ。よろしく!」
一同拍手をする。
アリス 「メギオドンさん、格好いいですー」
かぐや姫 「うむ、見上げた根性じゃ」
白雪姫 「私も応援しています」
怪人 「あぁ、みんなありがとう」
おばあさん「メギオドンはゲームの中でもみんなを引っ張っていてくれたからねぇ。これからもよろしく頼むよ」
メギオドン「はい、さとみさん。後、このメンバーのラインのグループも作っておきました。みんなを招待してあるんで確認しておいて下さい」
シンデレラ以外の全員がスマホを取り出し何やら操作をしている。それぞれ怪人にお礼を言っている。その様子を見てカルチャーショックを受けるシンデレラ。
シンデレラ「あれっ、あーそういう感じ。みんな持ってるんだ・・・へーそうか、そうか。(お客さんに)一体・・・今は西暦何年ぐらいなんですかねー」
一段落してスマホを直す一同。
おばあさん「すまないね、仕切り直させてもらうよ。えーっ、今日は『へっぽこクエスト』の親睦会という事だけど・・・」
シンデレラ「ねぇ、ばあや」
おばあさん「何だい?」
シンデレラ「『へっぽこクエスト』って何?」
おばあさん「ケータイゲームのタイトルだよ」
シンデレラ「あぁ、そうなんだ」
おばあさん「(再び全員に向かって)その前に、聞いてもらいたい話があるんだ。みんな今、怪人が現れて地球を征服すると宣言している話は知っているるかい?」
アリス 「あーこないだネットで見ましたー」
かぐや姫 「うむ、何とも恐ろしい話じゃな」
シンデレラ「ねぇ、アリスちゃん。ネットって何? あとみんなが持っているその四角いのは何かな? 詳しく教えてもらえる?」
アリス 「ネットはですねーえっとー電波がーどうたらこうたらでーー・・・あ、これはスマホです!」
シンデレラ「そうなんだ、ネットは電波がどうたらこうたらなのね。あっ、これがスマホ! ん? スマホとケータイは何が違うの?」
白雪姫 「(話に入って)スマホも一応ケータイの事なんですけど・・・」
おばあさん「シンデレラ、うるさいよ。好奇心旺盛かい!」
シンデレラ「だってーみんな時代設定無視してるんだもんー」
おばあさん「世の中にはね、どうにもならない事もあるんだよ。作者の都合ってやつさ。ほらっ、黙って話を聞きなさい」
シンデレラ「はい・・・」
おばあさん「とにかくあたしはその怪人に戦いを挑もうと思っているのさ。そりゃあ無茶かもしれないよ。けど誰かがやらないと地球が滅びてしまうからね。まぁ、まずはどこにいるかわからない怪人を探すつもりだ」
アリス 「怪人ってどこに行ったんですかねー」
かぐや姫 「そういえばこの前、他の国が襲われてから、行方を眩ましているのぅ」
白雪姫 「ひきこもってるんですかね」
かぐや姫 「しかし、さとみさん。大丈夫なのか? 怪人は凶暴なやつだと聞いておるぞ」
おばあさん「もちろんあたし一人で戦おうなんて思っちゃいないよ。で、ここからが本題なんだが、実はあたしのご先祖様が残してくれた・・・」
シンデレラ「(怪人をチラッと見て)あのーみなさん盛り上がってるところ申し訳ないんですけど・・・」
おばあさん「またかい、シンデレラ! 今、大事な話をしているんだよ」
シンデレラ「うん、それはわかってるんだけど・・・」
アリス 「ごめんなさいーシンデレラさん。少しー静かにしてもらえますか?」
かぐや姫 「アリスの言うとおりじゃ。さとみさんの話が終わってからでもよかろう」
白雪姫 「病んでるんですか?」
シンデレラ「みなさん、すみません。でも一言だけいいですか? すぐ終わるんで。ばあや、お願い!」
おばあさん「もう、わかったよシンデレラ。早く、すませておくれ」
シンデレラ「ありがとう。本当に一言なんで、みなさんよーく聞いててください。いいですか?」
一同、シンデレラに注目する。
シンデレラ「・・・怪人いますよ、ここに」
怪人を指差すシンデレラ。
沈黙。
シンデレラ以外の一同「えーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
シンデレラ「いや何で気付かなかったの? 普通に自己紹介してたし! てか怪人も一緒になって驚かない!」
メギオドン「あ、ごめん・・・」
一同、メギオドンを取り囲んで戦闘モード。
おばあさん「遂に現れたな、怪人メギオドン!」
アリス 「月に変わっておしおきしたるでーしかし!あー眼鏡、眼鏡・・・」
シンデレラ「変わり身早っ! あのーみんなさっきまで怪人と仲良くしてたよね。後、アリスちゃん、キャラが訳わかんない事になってるよ!」
かぐや姫 「よくもみんなを騙したな。妖術の使い手か・・・」
シンデレラ「うん、少なくとも今日のお客さんは、誰も騙されてなかったと思う。(辺りを見渡し)あれっ、白雪姫は?」
白雪姫 「あわわわわわわわわ・・・」
シンデレラ「もうっ、白雪姫ショックでおかしくなってるじゃない」
メギオドン「さとみさん、みんな。一緒に『へっぽこクエスト』をプレイしていた時間は、俺にとってかけがえのないものだ。あわよくば、このままの関を続けていたかった・・・しかし俺は怪人メギオドン。怪人の名にかけても地球侵略を諦める訳にはいかない!」
アリス 「おーっ、怪人っぽーい」
かぐや姫 「さすが本職じゃのぅ」
白雪姫 「あわわわわわわわわ・・・」
おばあさん「侵略するってのはノルマがあったりするのかい?」
メギオドン「そうですね。どうしても他の怪人と比べられてしまうので」
おばあさん「怪人も色々と大変だねー」
メギオドン「不景気ですから。あ、さとみさん! ここからは一応敬語使うのやめますね。何か怪人としての迫力が薄れるんで」
おばあさん「あぁ、そうした方がいいよ」
メギオドン「ありがとうございます」
白雪姫 「あわわわわわわわわ・・・」
シンデレラ「みんな、緊張感なさすぎよ! あっ、白雪姫は少し落ち着こうか。水とか飲む?」
メギオドン「世間話はこれで終わりだ! さぁ来い!」
おばあさん「あーもう始まる感じだね。ごめん、ちょっと待ってもらえるかい?」
メギオドン「・・・待つだと? 俺は怪人メギオドン。敵にそんな情けを・・・」
おばあさん「みんなーちょっと集まって頂戴!」
メギオドン以外、おばあさんの元に集まる。
おばあさん「あのね、とりあえずみんなに英雄の素質があるかどうか確かめたいから、ちょっと裏に来てもらえる?」
かぐや姫 「英雄って一体なんの事なのじゃ?」
アリス 「そうですよーさとみさん。まだその説明聞いてません」
おばあさん「まぁ、細かい事は後で話すから。ほらっ! 急いだ、急いだ!」
アリス 「えっ、ちょっと!」
かぐや姫、アリス、おばあさんに促され上手へとはける。
白雪姫、固まってその場から動けない。
おばあさん「白雪姫、何してるんだい。ほらっ、行くよ!」
白雪姫 「すみません、興奮してしまって。本当に怪人っていたんですね。私、実は怪人のファンなんです。あ、足が・・・動きません・・・」
おばあさん「毒リンゴばっかり食べてるからそんな事になるんだよ。あんた、あたしよりもおばあさんみたいだね」
おばあさん、白雪姫を肩を担いで、上手へ。
シンデレラ「ばあや! 確かめるって一体どうするのよ?」
おばあさん「あー英雄テストに記入してもらうだけだから。ほらっ、マークシート式になってるからすぐ終わるよ、すぐ」
シンデレラ「え? 何それ?」
おばあさん「何って、マークシートだよ。学生のテストの時にやっただろ。鉛筆で塗りつぶして採点してくれるやつ」
シンデレラ「それはわかってるんだけど・・・えっ、素質があるか確かめる方法って筆記テストなの?」
おばあさん「うん」
シンデレラ「あ、そうなんだ・・・もっとファンタジーな感じで調べるんだと思ってた。ほらっハリーポッター的な」
おばあさん「あんたも時代設定無視してるじゃない」
シンデレラ「もうやけくそよ」
おばあさん「とにかく全然違う。実際はもっと現実的さ」
シンデレラ「・・・ごめんなさい、そうとは知らず。でも! それで英雄の素質があるかはわかるのよね?」
おばあさん「大体わかる!」
シンデレラ「大体って・・・」
おばあさん「あたしが寝る間を惜しんで作ったテストなんだから問題ナッスィング!」
シンデレラ「え、ばあやが作ったの? 本当に大丈夫?」
おばあさん「大丈夫、大丈夫。じゃあ行ってくるから留守番頼んだよ」
シンデレラ「ちょっと、ばあや!」
メギオドンと二人きりになるシンデレラ。
シンデレラ「あ・・・どうも」
メギオドン「どうも・・・」
シンデレラ「待ちますか?」
メギオドン「そうだな」
沈黙。
声 「(マイクを使って)二時間後・・・」
メギオドン「あのさ・・・」
シンデレラ「はい?」
メギオドン「みんな遅くない?」
シンデレラ「マークシートの採点に時間がかかってるんじゃないですか」
メギオドン「あ、そう・・・俺、帰ろうかな」
シンデレラ「それはダメですよ!」
メギオドン「けど俺だって他にも侵略したいところがあるしさ」
シンデレラ「気持ちはわかるんですけど・・・あっ、そうだ! 私にいい考えが!」
メギオドン「何だ? 良い考えって・・・」
シンデレラ「それはですね・・・」
●暗転
シンデレラ、メギオドン板付き。
真剣な様子でオセロをしている。
おばあさん、上手から入ってくる。
おばあさん「いやーっ、お待たせ! って何オセロしてるんだい!?」
シンデレラ「ばあや、話しかけないで。今、全神経を集中させているところだから」
メギオドン「あぁ、この一戦に全てをかける!」
上手から白雪姫登場。どこか元気がない。
ふらーっと歩きながらオセロを蹴ってしまう。
シンデレラ メギオドン「あーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
シンデレラ「オセロが・・・オセロが・・・」
メギオドン「(松田優作風)なんじゃこりゃー!!」
おばあさん「(哀れんで)あんた達にいったい何があったんだい・・・」
白雪姫 「(我に帰り)はっ、ごめんなさい! 私、全然気づかなくて・・・」
シンデレラ「(どこかいじけて)もういいわよ。・・・けど私たち六時間も待ってたのよ。メギオドンさん、全部で何戦しましたっけ?」
メギオドン「五十戦はしたんじゃないか、まぁ俺の方が勝ってたけど」
シンデレラ「違います、勝ったのは私です」
メギオドン「いや俺だろ」
シンデレラ「私です」
おばあさん「まぁまぁ、いいじゃないか! たかがオセロなんだし喧嘩しないで・・・」
メギオドン「(シンデレラと同時に)さとみさんのせいだろ!」
シンデレラ「(メギオドンと同時に)ばあやのせいでしょ!」
おばあさん「・・・すいません」
シンデレラ「で、みんなの結果はどうだったの? これだけ時間かかったんだから、ちゃんと成果はあったんでしょ?」
おばあさん「全然ダメ! 全員不合格。もう全く英雄の素質がないね」
シンデレラ「え?」
メギオドン「何それ?」
おばあさん「だってあの子達、英雄の事何も知らないんだもん。簡単な問題なのに赤点だらけよ」
メギオドン「おいおい! 俺が待ってた時間はどうしてくれるんだ!」
シンデレラ「私が待ってた時間もどうしてくれるのよ、ばあや!」
おばあさん「そう言われてもねぇ・・・」
白雪姫 「ごめんなさい・・・難しすぎて手も足も出ませんでした。現在進行形で病みまくってます・・・」
シンデレラ「まぁ・・・普通はわからないもんねぇ」
上手からアリス、かぐや姫、落ち込みながら登場。
シンデレラ「みんな大丈夫? 甲子園に出られなくなった高校球児みたいになってるけど」
アリス 「わたし悔しいです!」
かぐや姫 「わらわもじゃ! ここまで現実は厳しかったとは・・・」
白雪姫 「毒リンゴー毒リンゴーをくださーい!」
シンデレラ「あーっ、白雪姫が壊れた!」
おばあさん「・・・まぁこんな感じだね」
メギオドン「もうダメだ!! 俺は待てないぞ!! お前らがどうなろうと知らん! この城ごと破壊してやる!」
シンデレラ「メギオドンさん怒ってるじゃない!」
かぐや姫 「わらわ達にも何かできる事はないのか?」
アリス 「あったら苦労しないですよー」
白雪姫 「絶体絶命ですね・・・」
シンデレラ「ばあや、どうすればいいの!?」
おばあさん「・・・うーん、そうだね。もう面倒臭いから・・・魔法でパパッと伝説の英雄になっちゃう?」
おばあさん以外の全員「・・・え!?」
沈黙。
メギオドン「なれるの・・・?」
白雪姫 「魔法で・・・?」
アリス 「わたしたちが・・・?」
かぐや姫 「英雄に・・・?」
シンデレラ「素質は・・・?」
おばあさん「あーもう素質とか関係なく、すぐなれるよ」
おばあさん以外の全員「さとみー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
シンデレラ「ばあや、何でそれを早く言わないの!」
アリス 「さとみーてめぇぶっ殺す!」
かぐや姫 「アリス、キャラが崩壊しておるぞー落ち着くのじゃ!」
白雪姫 「魔法でなれるんだ・・・へーそうなんだ・・・」
おばあさん「ごめん、ごめん! 何かその方がドラマチックな展開になるかなーって思って」
シンデレラ「全然、ドラマチックじゃないわよ!」
かぐや姫 「うむ、無駄に落ち込んだだけじゃ」
白雪姫 「そうですね・・・」
アリス 「てかさとみさーあのかったるいテスト全部無駄じゃない? 何でそんな事すんの?」
おばあさん「いやーそれはだね、何というかー段取りというか。いやっ、あのテスト作ってるうちに段々楽しくなってきた部分もあって・・・」
アリス 「メギオドンとシンデレラさんなんか、あたし達のテストが終わるまで6時間待ってんだよ。かわいそうじゃん」
おばあさん「そうだねーもう全面的にその通りだね」
シンデレラ「うわーっ、ばあや格好悪っ! 年下に普通に説教されてるし」
かぐや姫 「アリスってぶりっ子だったんじゃな・・・」
シンデレラ「うん、あんな可愛いらしい雰囲気なのに・・・」
白雪姫 「元ヤンですかね?」
アリス 「おい! さとみ! わたしはなーテスト何かガキの頃から大っ嫌いなんだよ。それをイメージ守るために無理してやってやったのに、いい加減にしろよこの野郎! ダンカンこの野郎!!」
シンデレラ「アリスちゃん・・・すごく口が悪いし、もう見るに堪えないレベルだけど、今回は何も言わないわ。ばあやが全て悪い」
かぐや姫 「アリス・・・ガラが悪いのぅ」
白雪姫 「絶好調ですね」
シンデレラ「あのーアリスちゃん・・・」
呼びかけられて、静止するアリス。
アリス 「(元のぶりっ子に戻って)はいっ! どうかされましたー?」
シンデレラ「あーすごいね」
かぐや姫 「徹底しておるのぅ」
アリス 「何がですかー?」
シンデレラ「いや、何もないよ」
白雪姫 「あのーアリスさんって元ヤンなんで・・・」
シンデレラ「(白雪姫の話を遮って)ちょっと! 白雪姫も余計なこと言わなくていいから。もうっ、ばあや何とかしてよ! みんな混乱してるわ」
おばあさん「はいはい、わかりました! 英雄にします。英雄にすればいいんでしょ」
アリス 「何で嫌々なんだよ、てめぇ!」
シンデレラ「はい、アリスちゃん落ち着こうね」
アリス 「(元のぶりっ子に戻って)そうですねー」
おばあさん「じゃあみんな準備はいいかい? いくよ! テクマクマヤコンテクマクマヤコン伝説の英雄になーれ!」
効果音とともにシンデレラ達に魔法がかかる。
シンデレラ「あれっ、何も変わってないけど」
かぐや姫 「本当じゃのぅ」
おばあさん「(ポケットから取り出したメモを見ながら、棒読みっぽく)えーっと、衣裳の都合上、見た目は変わりません。あのーそのー新しく作ると時間がかかるし、稽古にも支障がでるのでご了承ください。えーっ、そのー演劇なので実際にビームとかも出ません。しかし魔法により、えーっ変身しているという設定なのでそれっぽいお芝居をして下さい。あのーそのーえーっと、何ていうかなーあのー・・・そうあんた達は伝説の英雄、名づけて『ヒロイン戦隊』だ!!!」
おばあさん以外の一同「おーっ!!」
アリス 「ヒロイン戦隊! 何か格好いいですねー」
かぐや姫 「うむ、心なしか強くなったような気がするのぅ」
白雪姫 「私が・・・英雄・・・!!」
シンデレラ「ちょっと待ってばあや! ヒロイン戦隊って私も含まれてるの?」
おばあさん「当たり前さ」
シンデレラ「でも私、戦えないよ」
おあばさん「わがまま言うんじゃないよ。どちらかというとシンデレラは戦隊ものでいうレッド的な立ち位置なんだから」
シンデレラ「レッドって・・・どういう事?」
かぐや姫 「みんなのリーダーって事じゃないかのぅ」
アリス 「そうですよ! リーダー、リーダー」
シンデレラ「えっ、そうなの!?」
白雪姫 「シンデレラさん、向いてると思いますよ」
シンデレラ「そうかなぁ・・・」
かぐや姫 「うむ、シンデレラがリーダーなら一安心じゃ」
アリス 「わたしも賛成でーっす」
シンデレラ「みんながそこまで言うなら・・・頑張ります」
おばあさん「うん、なかなか良さそうなチームじゃないか」
盛り上がる一同。
メギオドン「あのさぁ、そろそろ戦わない? 俺、さすがに待つの疲れたんだけど」
シンデレラ「あ、すみません。はい、とりあえずみんな戦おっか」
かぐや姫 「ではシンデレラ、怪人が現れた時の決め台詞から頼む」
シンデレラ「決め台詞って?」
アリス 「ほらっ、さっきさとみがやってたじゃないですかー。『遂に現れたな!』みたいな」
おばあさん「あ、あたしのことはもう呼び捨てなんだね」
シンデレラ「そうなんだ、あれが決め台詞なのね!」
白雪姫 「いいですねー戦隊モノって感じでテンション上がります」
シンデレラ「ちょっと待ってね、深呼吸するから・・・(深呼吸をして)よしっ! ・・・遂に現れたな怪人メギオドン! ・・・きゃーっ、言っちゃった。今のどうでした?」
かぐや姫 「うむ、様になっておったぞ」
アリス 「シンデレラさん格好いいですー」
白雪姫 「けどレッド的な立ち位置としては迫力に欠けますね。もっと地球の命運を背負っているみたいな感じがいると思います」
シンデレラ「あっ、なるほど」
アリス 「どうですかー? 初決め台詞の感想は?」
シンデレラ「うん、思ってたより気持ちよかったよ。けど自分としてはもうちょっとこう決め台詞っぽくいきたいんだけどなー」
かぐや姫 「すぐに慣れてくると思うがのぅ」
シンデレラ「そうですかね」
メギオドン「(少しいじけて)あのさぁー決め台詞の感想とかいいから早く戦おうよー」
シンデレラ「あ、すみません」
メギオドン「俺もさっさと終わらせて他の国、侵略したいんだから頼むよ」
シンデレラ「はい、わかりました。ねぇ、ばあや。戦うって具体的にどうすればいいの?」
おばあさん「そりゃパンチとかキックとか必殺技とか色々あるじゃないか」
シンデレラ「あーそんな感じなんだ」
アリス 「結構シンプルなんですねー」
かぐや姫 「とにかく一応変身しているようだし、メギオドンに向かっていけば何とかなるんじゃないかのぅ」
シンデレラ「わかりました。やってみます!」
白雪姫 「頑張って下さい!」
シンデレラ「はい! くらえーっ、ヒロインパーンチ!!!」
メギオドンに向かっていくシンデレラ。
パンチを繰り出すが足を痛める。
シンデレラ「あっ、ちょっとごめんなさい・・・」
かぐや姫 「大丈夫かシンデレラ!」
アリス 「どうしたんですか?」
シンデレラ「日頃の運動不足で・・・足をつりました・・・」
沈黙。
アリス 「さすがメギオドン、やっぱり強いですー」
かぐや姫 「何て奴じゃ」
白雪姫 「怪人恐るべし・・・」
メギオドン「いや、俺、何もしてないよ」
アリス 「どうしますー?」
かぐや姫 「パンチが効かないとなるとのぅ」
白雪姫 「大丈夫、私たちには必殺技があるはずです」
かぐや姫 「うむ、そうだったな。さとみさん、わらわにはどんな必殺技があるのじゃ」
おばあさん「(再びメモを見て棒読み)えーっとね、ヒロイン戦隊には全員で協力して繰り出す必殺技。あのーそのー『必殺メガトンヒロインアタック』があります。えーっと、そのー特に何かが起きるわけではないので掛け声とともに、これまたそれっぽいお芝居をしてください・・・っていう感じだよ!!」
かぐや姫 「なるほど、理解した」
アリス 「シンデレラさん、まだ痛みますか?」
シンデレラ「ごめんね、もう大丈夫みたい。みんなで必殺技を出しましょう」
白雪姫 「どんな技が出るか楽しみですね」
シンデレラ「じゃあみんな行くよ! 必殺メガトンヒロインアターック!!!」
一同、メギオドンに向かっていく。
シンデレラ、再び足をつる。
かぐや姫、こける。
アリス、電話がかかってくる。
白雪姫、ケータイカメラでメギオドンの写真を撮る。
その様子を見て、微動だにしないメギオドン。
沈黙。
ヒロイン戦隊一同「強い・・・」
メギオドン「いや、あのさぁ・・・」
おばあさん「メギオドン、はっきり言った方がこの子達のためだよ」
メギオドン「あぁ、そうだな。えー俺は確かに強いが、お前達はもう話にならないぐらいに・・・弱い!!」
ヒロイン戦隊一同「(ショックで)そんな・・・」
シンデレラ「ばあや、どうしてなの? 全く怪人に勝てる気がしないんだけど」
おばあさん「ちゃんと変身はしてるんだよ。魔法もかけたし」
かぐや姫 「じゃあなぜ、わらわ達はここまで弱いのじゃ」
アリス 「正直ショックですー」
白雪姫 「(ケータイを見つめながら)いいショットが撮れましたよーあ、何の話ですか?」
おばあさん「まぁ、やっぱり素質だろうね。あたしが作ったテストもボロボロだったし」
アリス 「テスト関係ねぇだろうが!」
かぐや姫 「残酷じゃのぅ・・・」
シンデレラ「けど他に方法はないの?」
おばあさん「方法か・・・まぁ修行とかも全くしてないからね。それは確かにあるよ」
かぐや姫 「変身したからといって最初から強いわけではないのじゃな。やはり鍛錬が必要だというわけじゃのぅ」
白雪姫 「ドラゴンボールでもワンピースでも、みんな何かしら修行はしています」
アリス 「根本的に努力が足りないって事なんですかねー」
かぐや姫 「そうかもしれんのぅ」
シンデレラ「けど今すぐ強くなれる訳じゃないし、どうしよう・・・」
メギオドン「いい加減にしろ!!!」
静まり返る一同。
メギオドン「お前達、英雄を一体なんだと思ってるんだ!」
シンデレラ「すみません・・・」
メギオドン「怪人と英雄はお互いに敵同士。しかし、戦う目的は違うがそれぞれに誇りを持っているというものだろう。だからこそ熱い戦いができる。『へっぽこクエスト』の世界でもそうだ。あれは俺たちにとっての青春だった。少なくとも周りに恥じないような戦いをしてきたはずだ。しかし現実のお前達はどうだ? 英雄としての誇りや自覚が全くないじゃないか」
シンデレラ「・・・わたしは一緒にゲームをしてなかったから、何とも言えないけど、でも図星のような気がする」
かぐや姫 「うむ、確かにそうかもしれん。わらわ達はあの世界でともに助け合い、生き抜いてきたのじゃ。それに比べれば今の自分達には色々と足りていないのかもしれんのぅ」
アリス 「本当にいろんな事がありましたねーみんなで協力して楽しかったですー」
おばあさん「あの世界ではアリスはあたしに素直だったねぇ」
アイス 「うるせぇ、さとみ!」
白雪姫 「けど現実とゲームの世界は違うと思います。今は実際に自分がそんな存在になってる・・・同じように自信を持てるわけじゃない・・・」
シンデレラ「白雪姫・・・」
沈黙。
メギオドン「・・・一ヶ月やろう!」
シンデレラ「え?」
アリス 「どういう事ですか?」
メギオドン「俺とお前達との戦いを一ヶ月待ってやる。それまで地球侵略は延期だ!」
安堵の表情を浮かべるシンデレラ達。
メギオドン「ただし条件がある!」
白雪姫 「・・・それは?」
メギオドン「俺と互角以上に戦える実力を身につける事。つまり修行をするチャンスを与えてやるって言ってるんだ」
おばあさん「おいおいメギオドン、そんな事言っていいのかい?」
メギオドン「あぁ」
シンデレラ「・・・どうしてそこまでしてくれるんですか?」
メギオドン「まぁ今までともに戦ってきた仲間だからな。ちょっとした情けだ。それにここまで弱いと張り合いがない。こんな状態で戦いに勝っても嬉しくもないさ」
アリス 「けどそんな事したらメギオドンさんが不利になるじゃないですかー」
メギオドン「俺は基本的にただ戦うだけでは意味がないと思っている。お互いの気持ちとそれに伴う実力があるからこそ、白熱出来るってもんだ。一ヶ月後、この城から北に向かった岩場で待っている。せいぜい修行に精を出すんだな」
下手へと去っていくメギオドン。
シンデレラ「メギオドンさん!」
メギオドン「何だ?」
シンデレラ「あの・・・言いにくいんですけど」
メギオドン「だから何だ?」
シンデレラ「それは・・・」
おばあさん「え、何、何? この雰囲気」
アリス 「どうしたんですかーシンデレラさん。モジモジしちゃって。あーっ、もしかして・・・」
かぐや姫 「なんじゃ? どうしたのじゃ?」
白雪姫 「告白するんですかね、メギオドンさんに。私もタイプなのに・・・」
かぐや姫 「え!? そうなのか! おいおい、いつからなのじゃー」
おばあさん「本当なのかい、シンデレラ! そんな甘酸っぱい展開にして。本当にいいのかい!?」
無言でメギオドンに近づいていくシンデレラ。
その様子を期待して見守る一同。
シンデレラ「あの・・・初めて会った時から言おうか悩んでたんですけど・・・」
メギオドン「(照れ臭そうに)あぁ・・・」
シンデレラ「もう正直に言います!」
シンデレラ以外の一同「おぉーっ!!」
シンデレラ「私たちの・・・師匠になってください!」
沈黙。
シンデレラ以外の一同「え?」
●暗転
数日後。岩場。
下手にメギオドン、上手にシンデレラ、アリス、かぐや姫、白雪姫が並んでいる。
シンデレラ達、メギオドンに決めポーズの指導をされている。
メギオドン「だから何度言ったらわかるんだ!」
シンデレラ「すみません!」
メギオドン「角度が違うっ! もっとビシッと腕を伸ばして!」
かぐや姫 「はいっ!」
メギオドン「もっと英雄らしくキリリとした表情で」
アリス 「はーい」
メギオドン「顔がたるんどる、引き締めろ!」
アリス 「はいっ!」
白雪姫、メギオドンの写真を撮っている。
メギオドン「(白雪姫に)お前はもう問題外だ。何回言ったら俺の写真を撮るのをやめるんだ? おぉ?」
白雪姫 「いやー指導しているメギオドンさん格好いいなーと思って」
メギオドン「おだてても無駄だ、早くしないと岩場を10周走らすぞ」
白雪姫 「(急いで決めポーズ)はいっ!」
メギオドン「いいか! 戦う直前のモチベーションをあげないで、本番で勝てると思うな! 怪人は凶悪な奴ばかりだ。一瞬の隙が相手にチャンスを与えてしまうぞ!」
ヒロイン戦隊「はいっ!」
メギオドン 「よしっ、もう一度最初からやってみろ!」
ヒロイン戦隊「せーの・・・ヒロイン戦隊参上!!」
決めポーズ(あまり格好いいものではない)の状態で静止して
いるシンデレラ達。
体がプルプルと震えている。
その様子をじっくりとチェックしているメギオドン。
メギオドン「よしっ、まぁいいだろう。じゃあ今日はここまで」
一気に力が抜けてその場に崩れるシンデレラ達。
下手へとはけていくメギオドン。
アリス 「もうダメですーメギオドンさんまるで松岡修三みたいですよー」
かぐや姫 「まさかここまで修行がきついとは・・・甘く見ておった」
白雪姫 「(ケータイを眺めながら)うおーぉぉぉっ、このメギオドンさんしびれるー格好いい!」
シンデレラ「白雪姫は元気だねー意外とひきこもり生活から抜け出しても何とかやっていけてるじゃない」
白雪姫 「さすがに毎朝5時起きですからね。太陽の光も慣れてきましたよ」
シンデレラ「わたしも少しは運動不足が解消されたと思うけど・・・」
アリス 「あのー今更なんですけどーシンデレラさん、何でメギオドンさんに師匠になって下さいって言ったんですかー」
かぐや姫 「うむ、わらわもあの時は本当に驚いたぞ」
白雪姫 「やっぱり、好きなんですか? メギオドンさんの事。(必死に)好きなんですか!!」
シンデレラ「白雪姫、顔が近い! そんなんじゃないわよ。ただ私たちって英雄の事何も知らないじゃない。初心者だし、わからない事だらけでしょ。それなのにヒロイン戦隊って名乗るのが嫌だったから・・・」
かぐや姫 「嫌だったから?」
シンデレラ「それだったら周りで一番詳しい人に教えてもらえないかなって。ただそれだけよ」
アリス 「けどどうしてメギオドンさんなんですかーーシンデレラさん、わかってます? 私たちは最終的にあの人と戦うんですよ」
シンデレラ「それはわかってるんだけど・・・」
かぐや姫 「しかし、メギオドンさんも変わっておるのぅ。反対すると思いきや意外にもあっさり引き受けて」
白雪姫 「でも何だかんだで乗り気じゃないですか? 教えるの楽しそうですし」
シンデレラ「そうよね、まぁこまで鬼教官だとは思ってなかったけど。とりあえず・・・」
ヒロイン戦隊「疲れたー」
上手後ろからおばあさん登場。
額縁を両手で持って、そこから顔を出している(違う場所から様子を見ているという設定)
おばあさん「ガールズトークに花が咲いているようだね」
シンデレラ「ばあや!」
かぐや姫 「さとみさん!」
アリス 「ちょっと、どういうことだよ! なんでさとみの顔だけが見えてるんだ?」
白雪姫 「生首みたいで気持ち悪いですね」
おばあさん「うん、白雪姫。思ってる事をストレートに口に出しすぎだね。こうみえて意外に傷ついてるんだから」
白雪姫 「ごめんなさい。で、どうして生首みたいな事になってるんですか?」
おばあさん「あんた全然反省してないね。もういいよ。これは魔法の鏡であんた達の様子を見てるんだよ」
シンデレラ「それだったら直接こっちに来てくれたらいいじゃない」
おばあさん「あたしもそんなに暇じゃないっていったろ」
かぐや姫 「という事はさとみさんは今、違うところにいるという事か?」
おばあさん「そういう事。(店員に)あ、すみませーん! ミックスグリル一つと、ドリンクバーをつけて頂戴」
シンデレラ「・・・何? ばあや、ファミレスにいるの?」
おばあさん「え? いやっ、あなた達バカですか? あたしがこんな状況の時にファミレスで一人ランチを満喫してるわけないじゃないですか。いやだねーもうバカ! バカですか!」
かぐや姫 「あからさまに動揺しているのぅ」
おばあさん「(店員に)すみませーん! あと食後にチョコレートパフェも追加で!」
アリス 「おい、さとみ! お前いい加減にしろよ! こっちは修行で疲れ果ててるってのに、何チョコレートパフェ注文してんだよ!」
おばあさん「(逆ギレして)あたしも昨日、麻雀でぼろ負けして心は疲れ果ててるよ! まさか国士無双、出されるなんて思ってないじゃない! (ミックスグリルを持ってきた店員に)あ、どうもありがとう。あのさーこの割引券使える? えっ、もう期限切れてるの?」
白雪姫 「さとみさん自由ですね」
アリス 「おい、さとみ! お前本当はこっちに来るのが面倒臭いだけだろ」
おばあさん「はい、正直に言います。そっちに行くのが面倒臭いです」
シンデレラ「ばあや、最低・・・」
おばあさん「いやっ、それはさすがに冗談よ。まぁ、とにかくだね、そっちにはメギオドンがいるからさっさと強くしてもらうんだよ」
かぐや姫 「他人事じゃのぅ」
白雪姫 「そうですね」
おばあさん「勘違いはしないで頂戴。心配はしてるんだから」
シンデレラ「心配なら何か協力してよ」
おばあさん「とにかく頑張るんだよ。ちょくちょくこうやってあんた達の修行風景を見ているから、何かあったら呼んで頂戴。じゃあね」
上手後ろへとはけていくおばあさん。
シンデレラ「何だか、ばあやと話して余計に疲れた気がする」
かぐや姫 「そうじゃのぅ・・・ファミレスかー羨ましい」
白雪姫 「ドリンクバー頼んでましたよ」
かぐや姫 「チョコレートパフェもな」
アリス 「そうだ、みんなでお茶にしません? わたしー今日は自前のティーカップ持ってきてるんですよ」
シンデレラ「アリスちゃん、ナイスアイディア!」
白雪姫 「一気にやる気が湧いてきました」
かぐや姫 「うむ、そうしよう。おっ、そういえばわらわも和菓子を持っていたのを思い出した。確か着物の中に・・・ほらっ、カステラじゃ!」
シンデレラ「そんなものよく着物に入れてましたね」
アリス 「それって賞味期限大丈夫なんですかー?」
かぐや姫 「消費期限というやつはとっくに過ぎておるが、カビは生えておらん」
白湯姫 「それなら安心です」
シンデレラ「うん。カビが生えてないなら、美味しくいただけそう」
アリス 「あ、みんなカビ基準なんですねー良い子は絶対に真似しないでくださーい」
シンデレラ「それなら、メギオドンさんも呼んで来よっか?」
沈黙。
かぐや姫 「シンデレラ・・・本気か?」
シンデレラ「うん。いつもお世話になってるし」
アリス 「まだ帰ってないんですかね?」
シンデレラ「多分、その辺で休んでると思うんだけど」
かぐや姫 「そうじゃのぅ、せっかくだし」
アリス 「わたしは賛成でーす! みんなで楽しみましょう」
白雪姫 「じゃあ私、呼んできます!」
シンデレラ「あ、白雪姫。お願い!」
かぐや姫 「しかし岩場ではくつろぎにくいのぅ・・・」
シンデレラ「大丈夫、その裏にテーブルとか椅子があるから」
かぐや姫 「なぜそんなものが・・・」
アリス 「さすがご都合主義ですねー」
下手へとはけていく白雪姫。
裏からテーブルや椅子を取り出し、準備をしている一同。
かぐや姫 「何だか緊張するのぅ・・・」
シンデレラ「よく考えれば、修行の後はメギオドンさんすぐ帰るから、お茶なんてするの初めてなんだよね」
アリス 「どうしますーまた怒られたら」
シンデレラ「怒られるかな?」
かぐや姫 「シンデレラ、相手はメギオドンさんじゃぞ。お菓子を食べて、お茶を飲んでまったりしていても、いつ罵倒が飛んできてもおかしくない」
アリス 「それもそうですね」
シンデレラ「あーやっぱりそうかな? 私、誘わない方がよかったんじゃ・・・」
かぐや姫 「いやいや、シンデレラはいい事をしてくれたのじゃ。気に病む事はない。お世話になっているのは事実じゃからのぅ」
アリス 「けどーいきなりの罵倒はさすがにメンタルやられそうですねー」
かぐや姫 「うむ、身構えておく必要があるのぅ」
シンデレラ「何だか私まで緊張してきた・・・」
下手から登場するメギオドンと白雪姫。
白雪姫 「メギオドンさん、連れてきました」
白雪姫とメギオドン以外「お疲れ様です!」
メギオドン「お前達、まだ帰ってなかったのか?」
シンデレラ「はい・・・あのメギオドンさん、お茶入れたんで飲んで行ってください」
メギオドン「あぁ、もらうとしよう。お前達も座れ」
一同、椅子に座る。
メギオドン「・・・」
ヒロイン戦隊「・・・」
お互いに無言。ひたすらにお茶を飲み続ける。
気まずい雰囲気。ヒロイン戦隊、お前がメギオドンに話かけろと目で合図。
白雪姫 「メギオドンさんは、どうして地球を侵略しようと思ってるんですか?」
ヒロイン戦隊「(思わず咽せる)」
シンデレラ「白雪姫、ストレートすぎ!」
かぐや姫 「そうじゃ、話には順序というものがあってだな」
アリス 「でもわたしも気になりますー」
シンデレラ「アリスちゃんまで・・・すみません、メギオドンさん」
メギオドン「いいや、せっかくだから話しておこうか。その方がお互いのためになるかもしれんしな」
白雪姫 「お願いします」
メギオドン「・・・初めてあの城でお前達に会った時も話したが、地球侵略は俺の夢なんだ。実現するのが難しいからこそ、挑戦したい。それに俺は小さい頃からずっと自分の父親に地球を侵略するように育てられてきた。だから俺にとって地球侵略は父親への恩返しでもある」
かぐや姫 「メギオドンさんの父上も地球侵略を望まれていたんじゃな・・・」
アリス 「親子揃っての夢なんですねー」
白雪姫 「感動的です」
シンデレラ「けど・・・メギオドンさんが地球を侵略すれば、喜ばない人だっていると思います」
かぐや姫 「シンデレラ・・・」
メギオドン「そうだろうな」
シンデレラ「地球はみんなのものです。誰かが侵略していいものじゃない」
アリス 「シンデレラさーん、少し落ち着きましょうか。熱くなってますよー」
シンデレラ「熱くなんてない!」
アリス 「シンデレラさん、怖いですー」
白雪姫 「アリスちゃんも十分怖いと思います」
かぐや姫 「いや・・・シンデレラの言う通りじゃ。メギオドンさん、やはり地球は侵略しなければいけないのかのぅ。わらわから見てあなたは凶悪な怪人には見えない。むしろ真っ当な人の心を持っておられると思うのじゃ。できれば戦いたくはない」
アリス 「かぐや姫さんまでーちょっとーお茶会ですよ。空気重くなるじゃないですかー」
シンデレラ「ごめんね、アリスちゃん。けどメギオドンさんと戦う以上はっきりさせないといけない問題だと思うの」
白雪姫 「そう・・・ですよね」
アリス 「わかりましたー」
メギオドン「お前達が言っていることもよくわかる。しかし、今の地球はそれで本当に幸せなのか? 色々な国に王がいて彼らが支配する。結局、俺がやろうとしていることと何も変わらない。俺から言わせれば他の能力のない奴らが支配するくらいなら、俺の方がもっとこの地球をよくする自信がある」
シンデレラ「だから代わりに支配するんですか?」
メギオドン「そういう事だ」
シンデレラ「私にはわかりません・・・今は無理だとしてもいずれ自分達の意見を聞いてもらえる世界になるかもしれない。だから・・・侵略なんておかしいです!」
メギオドン「俺はどちらの意見が間違っているとは思わない。むしろどちらも正しいと思っている。しかし、だからこそ俺たちは戦うのではないか?」
シンデレラ「それは・・・」
メギオドン「これから先、このような戦いはずっと続くだろう。恐らく長い年月をかけてな。俺は後世に恥ずかしい姿は見せたくない。初めての怪人と英雄の戦いなんだ。全力でぶつかりたい・・・お互いの信念と信念の対決だ・・」
かぐや姫 「メギオドンさん・・・」
メギオドン「俺が負けた時は潔くこの星から出て行く。ただし対決当日は、今までの俺たちの関係を一切忘れろ。ゲームで協力した事も、こうやって修行をした事も全てだ」
アリス 「何だか悲しいですね・・・」
メギオドン「・・・じゃあ共存できるのか? さっきシンデレラが言っていたとおり、俺たちは戦うしかないんだ。余計な情は捨てて、お互いを敵とみなし、容赦をしない。約束できるな?」
ヒロイン戦隊「・・・はい」
メギオドン「よし」
席から立ち上がるメギオドン
メギオドン「明日は今日よりも過酷な修行になる。早く寝るんだぞ」
シンデレラ「ありがとうございます」
下手へと向かうメギオドン。
ふと立ち止まって、
メギオドン「あと・・・紅茶うまかった」
アリス 「違いますーこれ玄米茶ですー」
メギオドン「あ、そうなのか。そんな洋風なティーセットだから紅茶だと思った。てかどっちでもいいんだよ、そんな事。せっかくいいシーンなんだから、格好良くさっと帰らせろ、さっと」
ヒロイン戦隊「お疲れ様でーす」
メギオドン「はい、お疲れ様」
再び下手へとはけていくメギオドン。
シンデレラ「よしっ、みんな頑張ろう。メギオドンさんの修行に耐えて、強くなってみせるのよ」
かぐや姫 「そうじゃ、あそこまで言ってくれたんじゃからのぅ」
アリス 「メギオドンさん、やっつけちゃいます」
白雪姫 「最強の英雄になりましょう」
シンデレラ「ヒロイン戦隊ファイト!」
ヒロイン戦隊「おーっ!」
●暗転
対決当日。
岩場。
下手から現れるシンデレラ。
シンデレラ「・・・」
おばあさん、上手後ろから額を持って登場。
おばあさん「どうしたんだぃ、そんなしけた顔して」
シンデレラ「もうっ、ばあや驚かさないでよ」
おばあさん「お前が勝手に驚いたんじゃないか」
シンデレラ「そうね・・・ごめんなさい」
おばあさん「調子狂うねーもう。緊張しているのかい?」
シンデレラ「そりゃするわよ。今日の戦いで地球の運命が決まるんですもの」
おばあさん「そうだね、まぁしっかりやるんだよ」
シンデレラ「ばあやは今日も来てくれないのね」
おばあさん「あのね、対決当日でしょ。あたしがそこに居ると危ないじゃない。シンデレラ、年寄りはもっといたわるもんだよ」
シンデレラ「わかったわ。そこから見ていて。あ、みんな来たわ」
上手からかぐや姫、アリス、白雪姫登場。
かぐや姫 「お待たせ、シンデレラはもう来ておったんじゃな」
シンデレラ「なんか落ち着かなかったんで」
アリス 「それにしてもみんなすごいですよねー集合時間10分前に集まるようになったんだもん」
かぐや姫 「そうじゃな。白雪姫なんかいつも遅刻しておったのにのぅ」
白雪姫 「レベルが上がりました。朝の低血圧に変わりはないんですけど」
シンデレラ「みんな、いよいよだね・・・」
かぐや姫 「そうじゃのぅ」
アリス 「何だかこの一ヶ月があっという間でしたー」
白雪姫 「私たちちゃんと強くなったんですかね?」
シンデレラ「メギオドンさんの修行を乗り越えたんだから、きっと強くなってるよ」
かぐや姫 「あぁ、自信を持っていいはずじゃ」
白雪姫 「はい」
アリス 「けどもう本番かーメギオドンさん全力で来るんでしょうねー」
かぐや姫 「確かにそれは恐ろしいのぅ」
おばあさん「メギオドンはまだなのかい?」
アリス 「(おばあさんに気づいて)うわっ、またさとみかよ」
かぐや姫 「さとみさんも今まで世話になった。ありがとう」
白雪姫 「お世話になりした」
かぐや姫 「ほらっ、アリスも」
アリス 「お・・・世話になりました」
シンデレラ「ばあや、ありがとう。一時はどうなる事かと思ったけど、私、ヒロイン戦隊がこのメンバーでよかったわ」
おばあさん「あぁ、あたしが連れてきただけの事はあるだろ」
シンデレラ「うん」
おばあさん「じゃあみんな頑張るんだよ。もしあんた達に何かあったら、あたしがメギオドンをぶっ飛ばしてやるからね」
シンデレラ「ばあや・・・ぶっ飛ばすって」
白雪姫 「期待してます」
かぐや姫 「確かにさとみさんは強そうじゃ」
一同、笑いあって和やかな雰囲気。
シンデレラ「時間ね・・・もうすぐメギオドンさんが現れて、わかりやすく合図のセリフを言うと思うから、それまで隠れてましょう・・・みんな・・・頑張ろう」
お互いに顔を見合わせ頷くヒロイン戦隊。
上手、下手とわかれてはけていく。
取り残されるおばあさん。
おばあさん「(客に向かって)あたしは動けないからね、基本この状態だから。一応、違う場所で見てるっていう設定なんで、気にせず待ってて頂戴」
下手からメギオドン登場。
メギオドン「がっはっはっはー俺は怪人メギオドン! 地球を侵略してやるぞー誰か正義の味方はいないのかー」
おばあさん「あーっ、本当にわかりやすいセリフなんだね」
シンデレラの声「そうはさせない!」
白雪姫登場。
白雪姫 「この世に悪がある限り!」
アリス登場。
アリス 「ラインが来てても既読無視!」
かぐや姫登場。
かぐや姫 「クレオパトラもびっくり仰天!」
シンデレラ登場。
シンデレラ「世紀の美少女集団! その名も・・・」
ヒロイン戦隊、決めポーズ。
ヒロイン戦隊「ヒロイン戦隊参上!!!」
おばあさん「おーっ、様になってるねぇ」
メギオドン「ヒロイン戦隊だと?」
シンデレラ「現れたな、怪人メギオドン!」
アリス 「地球を侵略なんてさせません」
メギオドン「ほぅ、ならばどうするというのだ」
白雪姫 「私たちが相手です」
メギオドン「大した自信だ」
かぐや姫 「今のわらわ達には恐いものなどないのじゃ」
メギオドン「いいだろう・・・来い! 相手になってやる」
シンデレラ「覚悟しろ!」
メギオドンとヒロイン戦隊の戦闘が始まる。
おばあさん「ほらっ、そこ! もっと右、あっ、違う左!」
シンデレラ「ばあや、うるさい!」
それぞれに攻撃するが、メギオドンにダメージを与えることができない。
メギドドン「どうした? お前達の力はそんなものか!」
アリス 「駄目ですー全然攻撃が効きません」
かぐや姫 「ここはあの技を使うしかなかろう」
白雪姫 「以前に比べてパワーアップしましたもんね」
シンデレラ「よしっ、じゃあみんな行くよ! 必殺メガトンヒロインアターック!!!」
ヒロイン戦隊、手の平をメギオドンに向ける。
エネルギー波が放出(している設定)
メギオドン「ふんっ! そんな攻撃は効かん!」
白雪姫 「そんな・・・」
メギオドン「がっはっはっはー」
かぐや姫 「メガトンヒロインアタックが効かんとは・・・」
静けさの中、お互いに対峙。
シンデレラ「何て強さなの・・・」
アリス 「やっぱり無理ですよー」
白雪姫 「今まで頑張ってきたのに・・・」
かぐや姫 「おい、メギオドン! もう少し手加減してもよかろう」
メギオドン「手加減だと? 馬鹿な事を言うな。これでも十分に手加減をしてやっているつもりだ。もうお前達の実力のなさには付き合いきれん」
シンデレラ「私たちはあなたには負けない!」
かぐや姫 「そうじゃ。やっとみんなの気持ちが一つになったのじゃ」
白雪姫 「諦めない・・・絶対!」
アリス 「ヒロイン戦隊は強いんです!」
メギオドン「威勢だけはいいようだがこれが現実だ。ヒロイン戦隊! お前達は俺には敵わない。負けを認めろ!」
シンデレラ「地球の平和は私たちが守る! だから負ける訳にはいかないのよ!」
メギオドン「ふんっ、言いたい事はそれだけか。さらばだ・・・うおぉぉぉぉぉぉ」
力をためるメギオドン。強力なエネルギーをまとっている。
自分たちが負けると悟るヒロイン戦隊。
その瞬間、おばあさん、額を外してメギオドンに歩みよる。
おばあさん「(メギオドンの頭をはたいて)ドーン!」
沈黙。
メギオドン悶絶する。
メギオドン「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!!」
ヒロイン戦隊「え?」
メギオドン「はぁはぁはぁ・・・」
シンデレラ「何かメギオドン苦しんでない?」
かぐや姫 「確かに・・・」
アリス 「何かの演出じゃないですかーあたし達のやる気を出さすためとか」
白雪姫 「そうですよね、さとみさんの一撃で負ける訳ないですし」
メギオドン「(力尽きて)俺の・・・負けだ」
ヒロイン戦隊「負けたー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
かぐや姫 「シンデレラ・・・シンデレラ!」
シンデレラ「(我に返って)あ、ごめんなさい」
かぐや姫 「どうやら・・・勝ったようじゃ」
シンデレラ「あ、そうですね。じゃあ・・・ヒロイン戦隊の勝利なんですね。地球は救われたんですね、やったー・・・・・・ごめんなさい、やっぱり何か納得いかないっていうか・・・」
かぐや姫 「うむ、シンデレラが言いたいことはよくわかる。わらわも同じ気持ちじゃ」
アリス 「またさとみかよ」
おばあさん「いやーお疲れ、お疲れ。みんな大勝利だねー」
シンデレラ「ねぇ、ばあや。聞きたい事は山ほどあるんだけど、とりあえずその額って意味あったの?」
かぐや姫 「さとみさん、確か違う場所から魔法の鏡で見てるって言ってたのぅ?」
おばあさん「うん、今日も漫画喫茶で様子を見てたんだけど、なんかみんなが危ないって思ったら出てこれたみたいだね。あたしもびっくりだよ」
白雪姫 「衝撃的瞬間でした」
シンデレラ「それに何で私たちの攻撃は効かないのに、ばあやの攻撃は効くのよ。メギオドンさん! 演技してませんか?」
メギオドン「いや、本当に大ダメージ。死ぬかと思った」
白雪姫 「何か全部さとみさんに持っていかれたって感じですね」
アリス 「さとみさー何でそんなに強いの?」
おばあさん「どうしてだろうね」
シンデレラ「ばあやー私達一ヶ月も修行したのよ。こんなのあんまりじゃない」
おばあさん「何ていうか・・・あたしには英雄の素質があったんだろうね。ほらっ、一応メンバーだし」
ヒロイン戦隊「ん?」
シンデレラ「ちょっと待って! ばあやはヒロイン戦隊なの?」
おばあさん「あれ気づいてなかったのかい? あたしも一緒に変身の魔法かけてたの見てただろ?」
かぐや姫 「確かに・・・」
おばあさん「ほらっ、戦隊ものって必ず5人いるじゃない。やっぱり4人だとおかしいし。ってことでみんなこれからよろしく頼むよ」
シンデレラ「もう私、頭痛くなってきた・・・」
メギオドン「さとみさん・・・」
おばあさん「何だい? メギオドン」
メギオドン「俺の師匠になってくれ」
アリス 「うるせぇよ! てめぇこの野郎!」
シンデレラ「アリスちゃん! キャラが崩れてるからー」
アリス 「ダンカンこの野郎!!」
かぐや姫 「みんなアリスを止めるんじゃ!」
暴走するアリス。
逃げるメギオドン。
それを止める一同。
はちゃめちゃな状況。
おばあさん「ストーップ! ほらっ、シンデレラ」
魔法をかけるおばあさん。
シンデレラとおばあさん以外の動きが止まる。
一歩前に出るシンデレラ。
シンデレラ 「その後、ヒロイン戦隊は度々現れる怪人達と戦い、地球の平和を守り続けたのだった。その功績は人々の記憶の中で伝説となり、後世の英雄達にも大きな影響を与えたのだという。・・・誰だって勇敢な英雄の心を持っている。普段は気づかないだけで、ふとしたタイミングでそれは目を覚ますのだろう。そう、あなたの心にもきっと・・・なんて、エンディングだからちょっと良いことを言って、好感度アップを密かに期待している私だ・・・」
おばあさん「はい、オッケー!」
魔法を解除するおばあさん。
再び一同の動きが再開する。
アリス 「ダンカンこの野郎ー!!」
かぐや姫 「止めるのじゃー」
白雪姫 「毒リンゴ持ってこーい!」
騒ぎの続く中・・・・・。
エンド
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