「不思議な三匹の子豚達」

〈登場人物〉

長男(ブッチ)

次男(ヤッチ) 

三男(タッチ)

お母さん

おおかみ(ガヤ)

サルの店主

ナレーション

ナレ     「これは三匹の子豚とおおかみの、少し不思議な物語……」              

 三男の回想シーン

 子豚達の家。 お母さんが子豚達に本を読んであげている。

お母さん  「……おおかみは逃げ出して、みんな幸せになりました。 めでたし、めでたし……」 

長 男   「わーっ、もう一回、もう一回!」

お母さん  「もう何度も読んでるでしょ」

次 男   「僕も読んで!」

お母さん  「駄目、早くお昼寝しないと、大きくなれないわよ」  

三 男   「……ねぇ……母さん」 

お母さん  「ん?」

三 男   「どうしていつもおおかみは悪者なの? ……僕、このお話あんまり好きじゃない……」

長 男    「何言ってるんだよ! おおかみはみんなを困らせるんだ。 そんな奴、悪者に決まってるだろ」

次 男    「そーだ、そーだ、おおかみは悪者だ」

お母さん   「静かにおし。 ねぇ、どうしてそう思うんだい? お前は、おおかみが怖くないのかい?」

三 男    「そりゃ怖いよ……牙だって鋭いしさ……けどいつも悪者で、何だか可哀相だよ。  ……もしかしたら友達にだってなれるかもしれないし……」

長男 次男  「友達!?」

お母さん    「お前は優しい子だからね。 けどおおかみは私たちを襲うかもしれないんだ…… 残念だけど、そんな彼らと友達になんかなれる訳ないんだよ」

三男     「だけど……」

長男     「お前いい加減にしろよ!」

次男     「兄ちゃん、こいつどうせそのうちおおかみに食べられるよ」

長男     「そうだな…ハハハ」

三男     「もういいっ! 何にも分かってないんだ……兄ちゃん達も、母さんも!!」

 走って家を飛び出す三男。
 下手へ 

お母さん  「ちょっと、どこいくんだい!」

次男    「ほっときなよ母さん」

長男    「そうそう、どーせいつもみたいにすぐ帰ってくるんだから。 それより、ね、もう一回だけ」

お母さん  「……」

長男    「母さん!」

お母さん  「あぁ…………これが最後だからね。 終わったらすぐ寝るんだよ」

長男 次男 「はーい!」

お母さん  「むかーし、むかし、あるところに……」

 暗転
 上手から三男登場。 

三男    「はぁ、はぁ……どうしよう……また飛び出して来ちゃった。 村の外は出たら駄目だって言われてたけど…………そろそろ暗くなりそうだし、やっぱり戻ろっかな…………ううんっ、僕は怒ってるんだ! 勝手におおかみを悪者だって決め付けて……この村のみんなも、母さんや兄ちゃん達も…………ひどいよ…………」

 風の吹く音。

三男    「風が気持ちいい…………おおかみはみんなを困らせるか……」

 突然、ガサガサと草むらをかきわける音が聞こえる。

三男    「えっ!」

 驚き、身構える三男。
 またしてもガサガサと音が聞こえる。

三男    「ははは……まさかね、ちょっと村の外に出たからって気にしすぎだな。ちっとも怖くなんか……」

 さらに音は大きくなり、三男のすぐ近くで止む。
 本気でびびる三男。

三男    「ひいいっ!! だっ、誰!!」

 声だけが聞こえる。

声     「君の方こそ……誰?」 

三男    「……え、僕は、豚だよ……君は?」

 返事が返ってこない

三男    「もしかして……おおかみ?」    

声     「……君はおおかみが嫌いなのかい?」

三男    「そんな事ないよ、まだあった事ないけど、きっと大好きさ」

声     「本当?」

三男    「本当だよ」

声     「そっか……」

 下手からゆっくりとおおかみ登場。
 驚き、固まる三男

三男    「……」  

おおかみ  「ねぇ……」

三男    「は、はいっ!」

おおかみ  「僕の事、いじめない?」

三男    「いじめる? どうして?  ……その傷はどうしたの!?」

おおかみ  「僕……僕ね……弱虫なんだ……弱虫はいじめられても仕方がないんだって母ちゃんが言ってた」

三男    「そんな……仕方がない事なんてないよ! 誰にやられたんだい? 僕、力はそんなにないけど、なんだったら代わりに!」

おおかみ  「ううん、僕がいけないんだ。 見た目ばっかりで、ちっとも強くなんかない。 みんなに迷惑ばかりかける、ただの弱虫なんだ」

三男    「弱虫?」

 突然笑い出す三男

おおかみ  「いくら何でもそんなに笑うなんてひどいよ!」

三男    「ごめん、ごめん……なーんだ、じゃあ僕と一緒だ」    

おおかみ  「君と?」

三男     「僕も弱虫なんだ。 いっつも迷惑かけて、母さんや兄ちゃん達に怒られてさ。 この前なんかヘビが突然現れて、もう泣きそうになったよ」

おおかみ   「へ……ヘビが!?」

三男     「うんっ、本気で怖がってたら、それを見てまたみんなに馬鹿にされたんだ。 どうだい? 僕もなかなかの弱虫だろ?」

おおかみ   「まだましだよ。 僕なんか、少しのがけや谷底を目の前にすると、すぐびくびく震えちゃうんだ。 ほんとおおかみとして情けないよ」

三男     「だけど君には丈夫な牙があって、なんてったって迫力があるじゃないか。 僕は全然強そうじゃないし、見た目通りだもん」 

おおかみ   「そんな事ないよ。 それに君は優しい。 僕、こんなに親切にしてもらったの生まれて初めてだよ……」

 何かに気づきはっとするおおかみ
 どこか言いづらそうに

おおかみ   「ねぇ……」

三男     「なんだい?」

おおかみ   「いや……あの……」

三男     「ん?」

おおかみ   「何て言うか……その……」

三男     「僕と友達になってくれない?」

おおかみ   「え!?」

三男     「だから友達だよ、友達」

おおかみ   「僕なんかでいいの!?」

三男     「もちろん!」 

おおかみ   「いやいや、やっぱり駄目だよ。 僕、知ってるんだ。 僕たちおおかみはみんなから嫌われてるんだって。 僕なんかと友達になったら、君まで仲間はずれにされちゃうよ」

三男     「そんなの関係ないよ、もともと仲間はずれにされてるようなもんなんだし」

 おおかみ 三男  少し遅れて同時に笑う
 日が沈み、辺りは暗くなる

三男    「いっけない、そろそろ帰らないと。 君はどうするの」

おおかみ  「僕も帰るよ、いじめられて落ち込んでる時とか、よくこうやって一人で散歩してたりするんだ。 ……君の住んでる所、綺麗だね」

三男    「そうかい?」      

おおかみ  「僕は山奥に住んでるんだけど、何だかすごくうらやましい。 夜に点く家の灯りが温かくて、おいしそうな匂いがして、色んな動物達の笑い声が聞こえて」

 二人で村の景色をしばらく眺める

三男     「君も住みなよ、ここに」

おおかみ  「ぼ、僕はおおかみだよ! みんなと一緒に住むなんて、そんなの無理に決まってる……」

三男     「いけるよ、今すぐじゃなくてもいい。 僕たちが大きくなって、強くなってからでいいんだ」

おおかみ   「強く?」

三男     「あぁ、弱虫なんかじゃない、本当に強くなってから。 一緒にここに住むんだ。 ね、きっと楽しいよ」

おおかみ   「一緒に……僕も……強くなれるかな?」

三男     「なれるさ、きっと!」

おおかみ   「……僕……強くなりたい」

三男     「あぁ……友達同士の約束だ」

おおかみ   「うん、約束……」

 三男の回想シーン終了。  

 暗転

ナレ     「その日、おおかみと子豚の三男は友達になったのです。 そして、月日が流れ、子豚たちも大きくなったある日の事……」 

数年後、子豚たちの家。 夜。
窓から外を眺め、考え事をしている三男。

三男     「友達同士の約束か……僕は周りにちゃんとした友達がいなかったから、あの時はうれしくて仕方がなかったっけ。 結局、あれから一度も会うことができなかったけど、あいつはどう思ってくれていたんだろう……今頃、何してるのかな……」

 長男が上手から現れる。 

長男     「おい、母さんが呼んでるぞ」

三男     「あ、兄ちゃん! 今、行くよ」

 ベッドで寝ている母さん。
 長男、次男、三男、全員集合。 

お母さん   「みんなそろったね」 

次男     「母さん、体の具合はどうだい?」

お母さん   「あまり良くはないけどね……けどおまえ達を残して、先に逝ったりするほど、母さんは弱くはないよ」

長男     「縁起でもない事、言わないでよ」

お母さん   「ただお願いがあるんだ……母さんを安心させて欲しい。 おまえ達は年齢的にも、もう立派な大人だ。 そろそろこの家を離れてもいいと思うんだよ」

三男     「一人で生きて行くって事?」

お母さん   「あぁ……生きるって事は冒険と一緒さ。 ずっと同じ事に満足しても、それじゃあ何も変わらない。 それどころか、何でも当たり前になって、大切なことを見失う事だってある。 外の世界を自分の目で見て、感じるんだ。 そうすれば色んなことに気づけるってもんだよ」

次男      「けど、そんないきなり一人で生きていくなんて無理だよ! 僕、まだまだできない事、沢山あるし……」 

お母さん    「おまえ達にならできるよ。 なんたって母さんの自慢の息子なんだからね。 ……明日、家を出るんだ」

長男 次男 三男  「明日!?」 

 しばらく無言。        

長男     「僕はやる、自分で生きて見せるよ、だから心配しないで母さん」

三男     「僕も大丈夫だよ」

次男     「ぼ、僕も……」       

お母さん   「ありがとう……じゃあ今日は明日の仕度をして、もう寝なさい」

 長男、次男、三男、下手に向かうが、三男だけ呼び止められる。

お母さん   「お前は残りな」

三男     「どうしたの?」 

お母さん   「今でもあの気持ちは変わらないのかい?」 

三男     「おおかみの事?」

お母さん   「あぁ……お前は結局、あたしの事も、兄さん達の言う事も聞かなかったんだ。 自分が村で、何て言われてるのかも知ってるねぇ?」

三男     「うん……でも僕は気にしてないよ」

お母さん   「そうかい……お前が思うようにやればいい……もう母さんは何も言わないよ。 ただこれからは、全部自分自身で受け止めていくんだ、誰も助けてはくれないんだからね」

三男     「わかってるよ、それに……」

お母さん   「それに?」

三男     「どこかもう慣れちゃってるところあるから」

 再び下手に向かうが振り返って

三男     「おやすみなさい」

お母さん   「おやすみ」

 暗転     

 翌日 朝
 子豚達の家 玄関前

お母さん  「じゃあね、元気でやるんだよ」 

 長男、震えながら、何かを我慢するように涙を流す。
 それを見た長男、次男もつられて悲しくなる。

三男     「兄ちゃん……」       

長男     「母さん……いつもわがままばっかり言ってごめんなさい! 悪いことばっかりしてごめんなさい! 僕、長男なのに何にも母さんにしてあげられなかった……母さんはいつも一人で僕たちを育ててくれた…なのに僕は……僕は!」

お母さん  「母さんはお前たちの事、苦労だなんて一度も思ったことないよ。 確かに裕福な暮らしじゃなかったかもしれないけど、お前達が育ってくれる事が母さんにとっては幸せなんだ。 だから何にも気にしなくていいのさ。 ほら、お前がうじうじしてどうするんだい。 何かあったら、弟達の事、助けてやるんだよ」

 長男の頭を撫でてやるお母さん

長男    「……はい。」

お母さん  「 お前たちも、しっかりね」

 同じように長男、次男の頭を撫でるお母さん。
 うつむきながら、返事をする二人。

三男、次男 「はい……」

 長男、次男、三男、互いに顔を見合わせて下手に向かう。
 お母さんの方を振り返り、大きく手をふる。 

長男、次男、三男 「行ってきまーす!!」

 下手にはける三人、笑顔で手を振る母。 
 しばらく経って、上手に移動しながら、

お母さん  「いつでも帰ってきていいんだよ。 あんた達の家はここなんだからね……」  

 暗転

 村の中、上手から三人登場。

次男    「これから一人で暮らすんだよなぁ……やっぱり不安だ……」

長男    「情けない事、言うなよ、俺達はしっかり生きていかなくちゃいけないんだ」

次男    「そりゃそうだけどさー」

長男    「うかうか何てしてられない、いつ、どんな事が起こるか、分かんないんだぞ。 万が一だ、もしおおかみが襲ってきたらどうする?」

 長男をにらみつける三男。
 大声をあげて、

三男    「おおかみはそんな事しない!」

長男    「おい、まだそんな事、言ってんのかよお前!」

次男    「ちょっと二人とも」

長男    「お前さ、あんまり母さんに心配かけるんじゃないぞ! お前が周りからどう思われても俺は知らないけど、母さんに迷惑かけると俺が許さないからな」

三男    「そんな事、兄さんに言われなくても分かってるよ!」

長男    「いいや、お前は分かってない! これから俺達は自分の力で生きて行くんだ。 その為には村の人たちとも協力していかないと、生きていけない。 なのに今のお前はどうだ? 子供の頃から、おおかみの事ばっかりかばって……はっきり言って、迷惑なんだよ!」

次男    「兄ちゃん、いくらなんでも言いすぎだよ! ほらお前も謝って!」

三男    「おかしいのは兄ちゃん達だ、何かあったら悪いのはいつもおおかみ、おおかみ……本物にすらあった事ないのにびくついて、決め付けて、みんなそろって馬鹿みたいだ!」

長男    「何だと!」

三男    「本当の事だろ!」

次男    「いい加減にしろ! 二人とも落ち着くんだ」

 しばらく無言の三人。 


次男    「これからは僕達も助け合っていくんだろ……」

三男    「もういいよ、僕は兄ちゃん達には頼らない」

次男    「おいっ!」

長男    「勝手にしろ、俺もこんな奴とはもう関わりたくない。 今までずっと我慢してたんだ……こいつが好き勝手、言えば言うほど兄弟の俺たちまで嫌な目で見られる。 それを毎回説明するのに今までどれだけ苦労したと思ってるんだ。 なぁ……お前もそうだろ?」  

次男    「……」

 何も言わない次男、それを見てショックな三男。

長男    「ほらな」

 何も言わずに走り去っていく三男、下手へ
 顔を見合わせる長男、次男。 長男 ため息をついて

長男    「あいつは昔と何も変わってないよ……」

 暗転

ナレ    「子豚達の村には、とあるお店がありました。 その店の主人はお調子者で、面倒見がよく、そんな気さくな性格から、何か相談があればこのお店に行くといった習慣がある程、村人からは評判だったのです」 

 村のとある店
 大きなあくびをしているサルの店主

店主     「ふーっ、ったく最近は不景気だねー。 店の商品も全く売れやしないし、これじゃあ温泉にも行けねぇ。 俺のツルツルお肌が台無しになるじゃねーか。 あー暇だ、暇だ……」

 店主、ため息をつく

店主     「店の扉が開いて、バナナでも入って来てくれたら、どんなにいいかねー」

 店のドアが開く音。

店主     「へい、らっしゃい」

 長男が上手からやってくる。 手にはバナナを持っている。

長男     「すいません……」

店主     「おお、豚さんとこの長男坊や。 やけに大きく……ぬおっ、それはバナナじゃねぇか!! 話はわかった、何が欲しい」

長男     「あのまだ、何も言ってないんですけど……」

店主     「いいから、俺にそれをくれるんだろ? さっさと用件を言え!」

長男     「はい、あの一人暮らしをしようと思ってるんですけど、良かったら材料とか分けてもらえないですか?」

店主     「ついにお前も一人立ちかぁー男はやっぱりそうじゃねぇとな。 よしわかった。 じゃあ、これを持っていけ!」

 店主、レンガを長男に手渡す。

長男     「これって……レンガじゃないですか!?」

店主     「おう、なんたって頑丈だ。 家を建てるならやっぱレンガよ。 お前は小さい頃からの付き合いだし、何よりバナナくれたからな。 特別だぞ」

長男     「はいっ、ありがとうございます!」

 ぺこりとお辞儀をして、長男再び上手へ戻る。
 店主、バナナを食べている。 

暗転

 再びとある村の店 

店主     「やっぱいい事するってのは気持ちがいいねー。 まぁ、そこが俺の器の大きいところだな。 店の扉が開いて、可哀想な目で助けなんて求められたら、俺としてはまぁほっとけないよなー」

 店のドアが開く音。

店主     「へい、らっしゃい」

 次男が上手からやってくる。

次男     「すいません……」

店主     「おお、豚さんとこの次男坊や。 やけに大きく……ぬおっ、何やら不安そうな顔をしてるじゃねぇか!! 話はわかった、何が欲しい」

長男     「あのまだ、何も言ってないんですけど……」

店主     「いいから、 さっさと用件を言え!」

長男     「はい、あの一人暮らしをしようと思ってるんですけど、良かったら材料とか分けてもらえないですか?」

店主     「うん、うんっ、偉い! そうなんだよ、どんなに辛いことがあって不安でも、男はやっぱりそうじゃねぇとな。 よしわかった。 じゃあ、これを持っていけ!」

 店主、木を次男に手渡す。

長男     「これって……木じゃないですか!?」

店主     「おう、レンガ程頑丈じゃないが、家を建てるぐらいなら問題ねぇ。 お前は次男のくせにどこか頼りなくて、俺としては今でも心配なんだ。 特別だぞ」

次男     「はいっ、ありがとうございます!」

 ぺこりとお辞儀をして、次男再び上手へ戻る。

 暗転

店主     「いけねぇいけねぇ、大体俺は人がよすぎるんだよな。 これじゃああげてばっかりで商売にならねぇよ……」         

 店のドアが開く音。

店主     「へい、らっしゃい」

 三男が上手からやってくる。

三男     「すいません……」

 驚いた様子の店主

店主     「……何しに来た?」

三男     「えっと……」

店主     「お前と話す事は何もない。 帰りな!」

三男     「お願いします! 話だけでも聞いて下さい!」

店主     「話だけでもねぇ……じゃあおおかみの話でもするか?」

 無言で怒りを抑える三男

店主     「お前は昔からだ……おおかみばかり悪く言うなだの、可哀相だの、俺達大人にも食いついてたな」 

三男     「それは……」

店主     「大体、甘すぎるんだよ。 確かにこの村にはまだおおかみが来た事がない、ただこれだけ危険だと言ってるのは、実際に被害にあっている村もあるからだ。 奴等は凶暴で冷酷、村人に迷惑をかけ、時には家だって破壊する。 そんな奴の事をどういいように言う事ができる? 俺達があいつらと仲良くなんて、できる訳ないんだよ」

三男     「その話、今は関係ないじゃないですか……」

店主     「ふーっ、相変わらず頑固な奴だなお前は……一人暮らしするんで、材料が欲しい……それがお前の用件だろ」

三男     「はい……」

店主     「今まで散々好き放題言っといて、よくそんな事が言えたもんだな」

三男     「……」

 無言でわらを三男に差し出す店主。

三男     「これは?」

店主     「お前はこれで十分だ。 ないよりましだろ。 それ持ってさっさと帰ってくれ」 

 わらを持ってゆっくりと上手に引き返す三男。
 帰り際、振り返って

三男     「ありがとうございました……」

 暗転

ナレ     「子豚達は材料を手に入れ、 長男はレンガの家、次男は木の家、三男はわらの家を村のはずれに建てる事となったのです。 一方、その頃……」

 村の外
 上手からおおかみ登場

おおかみ   「いやーっ、久しぶりだなー本当に懐かしい……確かここでしたんだよなー友達同士の約束。 まず会ったら何て話そう……久しぶり、それとも勝手にいなくなってごめん……きっと怒ってるだろうな、許してくれないかも。 けど僕は駄目だった、あの頃の弱くて情けない自分がすごく嫌で、君のそばにいると甘えてしまうような、友達だって言ってくれたあの気持ちが、君の中で変わってしまうんじゃないかって、それがとっても、とっても、恐くて仕方がなかったんだ。 ねぇ、僕は帰ってきたよ。 君との約束を守りに帰ってきたんだ!」

 とある村の店
 ドンドンと扉を叩く音。

おおかみ   「すいませーん!」

店主     「ったく誰だい……へい、らっしゃい! 鍵空いてますよー」

 扉を開けておおかみが店の中に入ってくる

おおかみ   「お邪魔します、あのちょっとお尋ねしたいんですけど、このあたりで豚さんのおうちってありますか?」

 驚いて固まってしまう店主。

店主     「ひいいっ、おおかみ!! ほ……本物のおおかみだぁぁ!!」

おおかみ   「えっ……」

店主     「近寄るな! 来るんじゃねぇ!」

おおかみ   「そんな僕はただ……」

店主     「何が目的だ! 食い物か?」

 店主に近づいていくおおかみ。

店主     「たっ、助けてくれー」

おおかみ   「ちょっと!」

 下手へ逃げていく店主

 長男の家、付近
 上手から大慌てで店主がやって来る。
 長男の家のドアを叩く。

店主     「た、大変だー」

 長男が家から出てくる。

長男     「あっ、どうしたんですか? そんな顔して!」

店主     「おおかみだよ!」

長男     「はい?」

店主     「おおかみがこの村に来てるんだ。 よくわからんが追いかけられてるんだよ! 頼む、家の中に入れてくれ!」

長男     「えっ! そんな、ウソでしょ?」

店主     「本当だ! 早くしてくれ。 もうそこまで来てるんだよ!」

 家の中に入る店主。
 おおかみが上手から現れる。

おおかみ   「何で! 何で逃げるんだよ?!」 

店主     「ほら来た!!」

長男     「本当だ……今まで話で聞いただけだったから、初めて見た……あの目、あの口……何て恐ろしいんだ! まずいですよ、このままじゃ村中パニックになる!」

店主     「そんな事、わかってるよ!」 

おおかみ   「おい! 入れてくれよ! ただ話がしたいだけなんだ!」

店主     「うるせぇ、おおかみと話なんかしてたまるか!」

おおかみ   「何で……」

店主     「どうせおまえ達にろくな奴なんかいねぇ、その鋭い牙も、とがった爪も、大きな口も、誰かを傷つけるためにあるんだろうが!!」

おおかみ   「僕はそんな事なんかしない!」

店主     「嘘、言うな! 他の村でもおまえ達の被害にあってる奴らがいるんだ。 おまえ達がいるだけで迷惑なんだよ。 、とっととこの村から出ていけ! どうせおまえ達の事を、友達だなんて思ってる奴なんて、一人もいないんだよ!!」

おおかみ  「そんな事……」

店主    「へっ……言い返せねぇのか! この見た目だけの弱虫が!」

おおかみ  「僕は……僕は弱虫なんかじゃない!!」

 レンガの家のドアを無理やりに開けようとするおおかみ

長男    「あいつ怒って入ってきますよ!」

店主    「大丈夫だ、なんたってこの家はレンガだぞ。 そう簡単に入ってなんかこれねぇよ」

おおかみ  「ちくしょー」

 涙を流しながらも、怒っているおおかみ。
 扉が開かないので煙突を上り入ろうとする。

長男    「静かになった……

店主    「ふーっ、さすがにあきらめて帰ったか……ただこれからどうするか……」

 突然、煙突から中に入ってくるおおかみ

おおかみ  「うおぉぉーっ!」

 驚く、店主と長男。 レンガの家から飛び出て、大慌てで下手に

店主 長男 「うわーっ!!」

 次男の家、付近。
 上手から店主と、長男が大慌てで走ってくる。
 次男の家のドアをドンドンと叩く。

店主     「おい、居るのか!?」

長男     「兄ちゃんだ! 開けてくれ!」

 ドアを開いて次男が出てくる。

次男     「ったくどうしたの? あっ、こんにちはこの間は材料をどうも」

店主     「そんな事はどうでもいい、早く中に入れてくれ!」

 無理やり中に入る、店主と長男。

次男     「ちょ、ちょっと!」

 上手からおおかみがやってくる。

おおかみ   「僕はもう怒ったぞ! もう昔の僕とは違うんだ!!」

 家のドアを無理やりに開けようとするおおかみ。
 驚く次男。

次男     「こ、これって!?」

長男     「本物のおおかみだよ!」

店主     「まずいぞ、家が!!」

 力をこめるおおかみ。
 木の家が壊れてしまう。

次男     「ぼ、僕の家が!」

店主     「早く逃げるんだ!!」

 急いで逃げていく長男、次男、店主。

 三男の家、付近
 上手から長男、次男、店主が走ってくる

長男     「おい! お願いだ、開けてくれ!」

次男     「兄ちゃんだ、頼む」

 ドアが開いて三男が出てくる。

三男     「みんな!? どうしたの?」

店主     「お前の大好きなおおかみだよ! 本当に村にやってきたんだ!」

次男     「早くしないとみんな襲われるぞ!」

三男     「そ、そんなおおかみが……」

 上手からおおかみ登場

長男     「来やがった……」

店主     「こんなわらの家なんかすぐに壊される。 もう終わりだ」

次男     「そんな……」

おおかみ   「はぁ……はぁ……僕は、僕は!!」

 驚いている三男 

三男     「き、君は!!」

おおかみ   「え?」

三男     「ほらっ、僕だよ!」

おおかみ   「もしかして……」

三男     「あぁ、久しぶり!」

 おおかみに近づいていく三男

長男     「やめろ! 近寄ると、襲われるぞ!」

三男     「大丈夫だよ」

おおかみ   「ごめん……」

三男     「え?」

おおかみ  「黙っていなくなって……あの頃の僕は自分の事が嫌で、君に嫌われてしまうんじゃないかって考えたら、会うのが恐くなった。 君の言うように大人になってから、強くなってから胸をはって会おうって思ったんだ。 ほら見てよ、牙も爪もこんなに大きくなって、今だったら崖だって簡単に飛び越えられる。 もう恐いものなんてないんだ! 君との約束を守るために、ずっと頑張ってきたんだよ。 強くなるんだって」

三男    「……君は強くなんてなってないよ」

おおかみ  「そんな、どうして!?」

三男    「いいや、君だけじゃない、僕もいまだに強くなんかない。 結局、僕達はあの頃、約束した僕達にはなれなかったんだ……」

おおかみ  「そんな事ない! 今だってそうだ! どんなに嫌われたって、もう昔のようにいじめられたりしないんだ!!」

三男    「けどそれじゃあ、君は本当に周りが言う、悪者になってしまうんだよ!」

おおかみ  「え……」

三男    「僕ね、あれからずっと考えてたんだ。 本当の強さって何なのかって。 君に約束をしたくせに僕が一番何もわかってなかったんだよ。 けど今ならなんとなくわかる。 多分、強いって事はただ力が強いとか、いじめられないとかそんな事じゃないんだ。 周りの目はすごく怖い……時には馬鹿にされる事だってある……だけど自分の気持ちを、自分の素直な言葉で、行動で伝える事が、本当の強さなんだって……」

おおかみ   「自分の……気持ち……」

三男     「だから僕もまだまだだけど、もう少しだけ、強くなりたいって思うんだ……」

 固まっている長男、次男、店主。
 大声で話はじめる三男。


三男     「みんな聞いて下さい! 彼は見た目は恐いし、迫力があるし、力もとっても強いし、家だって壊すことができる。  もしかしたらまた迷惑をかける事だってあるかもしれない。 だけど誰よりも弱いものの気持ちがわかっているし、いいところも沢山あるんです! ただの悪い奴なんかじゃないんです! だから僕は胸をはって言えます! 彼は僕の……僕の本当の友達なんです!!」

 その場に崩れて、大声で涙を流すおおかみ。   

おおかみ   「……ありがとう……ありがとうっ!!」

 その光景を黙って見ている長男、次男、店主                   

 暗転

ナレ     「その後、三男はおおかみの事を村人達に話ました。 彼が自分の親友だという事、この村で一緒にみんなと住みたいという事。 村人達は驚き、もちろん反対したのですが、最後まで三男はあきらめず、おおかみも必死で自分の気持ちを伝えました。 その姿を見た村人達は次第に心を打たれ、ついにおおかみはこの村に住むことになったのです」  

 子豚達の家
 ベッドで寝たままのお母さん。 扉の前に立っているおおかみと三男。

おおかみ   「どうしよう……緊張してきた……ちゃんと話せるかな……」

三男     「大丈夫だよ」

 ドアを開けて中に入る、三男、おおかみ

三男     「母さん、僕の友達を紹介するよ」

おおかみ   「えっと……何て言うか……その……」

 満面の笑みをおおかみに向けながら

お母さん   「よろしくね……」

                                           エンド

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