〈登場人物〉
佐々木 光輝 (33)自称金持ち
玉山 修一 (24)泥棒
遠藤 保則 (26)詐欺師
※補足『佐々木の家』
外観 (敷地も広く、大きな洋館の為、一見金持ちが住んでそうな印象を受ける。イルミネーションが取り付けられ煌びやかに輝いている)
内観 (外観とは違い、豪華な印象は全くなく、むしろボロボロの屋敷のようなイメージ。窓ガラスが割れて風が入っている所もあれば、佐々木が粗大ゴミ置場から拾ってきたボロボロの家具が埃をかぶっていたりしている。家は広いが佐々木は一部のスペースしか使用していない。基本の生活スタイルはカーペットがないのでブルーシート、座布団がないので潰れた段ボール、食べ物がないのでコンビニの廃棄弁当を拾いに行ったりと、ほぼホームレスのような生活を送っている)
◯佐々木の家 リビング
下手から玉山 登場。
玉山 「(小声で独り言)お邪魔しまーす。うわーっ、暗いなー・・・って誰も居ないんだから当たり前か。何かないかなーお金ないかなー100万円とかそのまま床に落ちてないかなー(足元に違和感)あれ? 僕、何か踏んだ? えーと、これは・・・ブルーシートだね。そしてー潰れた段ボール・・・ あ! これ座布団の代わりか! うん、うん、気のせいかなー何か嫌な予感がしてきた。けど僕はもう少し頑張ります。100万円ーー100万円ーー100万円・・・はないけど、空のカップラーメン大量!! 脱ぎ散らかした服ーかっこ穴あき!! 貧乏削りの鉛筆!!! はい・・・感じています、この肌で確かに感じています。僕のお金センサーに全く反応しない・・・入る家間違えたのかな? (何かに気づいて)うわっ!! 何、何、何か今通ってった? もしかしてゴキ◯リ? と、とりあえず電気・・・あ、これか。(ペンダントライトの紐を引っ張り、周辺にだけ明かりが灯る)うわーっ、ここ以外、家具すらない。ただ広いだけじゃん・・・急激にテンションが下がってきた。帰ろう・・・見つからないうちにさっと帰ろう、さっと」
ふいに玄関のインターフォンが鳴る。
玉山 「え?」
固まる玉山。
遠藤の声「こんばんわー、佐々木さんのお宅っすかー? あのーちょっとお話があるんっすよー」
鳴り響くインターフォン。
玉山、無視。
遠藤の声「あれ? いないのかな? あ、居るのに居ないフリとか止めてくださいねー」
意を決して、上手へとはけていく玉山。
玉山の声「ど、どうも・・・」
遠藤の声「さーせん、お忙しいところ。いやー寒いっすねー雪っすよ、雪」
玉山の声「あー本当ですねー」
遠藤の声「いやー俺ここまで歩いて来たんっすけど、途中でカップル達がいちゃいちゃしててたまんないっすね。いくらクリスマスイブだーつっても浮かれすぎだと思いません?」
玉山の声「・・・はい、羨ましいですね。えっと、何か用ですか?」
遠藤の声「あーここで話をするのも何ですんで・・・」
勝手に家の内へと入る遠藤。
上手から登場。
遠藤 「お邪魔しまーす」
続いて上手から玉山登場。
玉山 「ちょっと、勝手に入らないで下さい!」
遠藤 「(辺りを見渡して)え!?」
玉山 「はい?」
遠藤 「何これ・・・」
玉山 「(理解して)あーその反応はすごく共感できるんですけど・・・」
遠藤 「違う・・・何か・・・何ていうか、思ってたのと全然違ぇじゃん!」
遠藤、一目散に上手にはけていく。
家の外観を確認し終えて、すぐに上手から登場。
遠藤 「違ぇじゃん!!!」
玉山 「声でかいです」
遠藤 「外から見たらこの家、イルミネーションはすげぇし、雰囲気もやたらとセレブな感じが出まくってんのに、中は何でこんなにしょぼいんっすか?」
玉山 「まぁ、それはー仕方ないんじゃないですか?」
遠藤 「何か他人事っすよね?」
玉山 「いや・・・実際、他人ていうか何ていうか・・・」
遠藤 「何もないし、ボロいし、汚いし、俺もっとシャンデリアとかあるような、豪華な家を想像してたんっすけど!」
玉山 「いや、その気持ちはわかりますよ。すごく分かる。そう思って僕もこの家に入った訳だし・・・」
遠藤 「ん? 入ったって何がっすか?」
玉山 「あ・・・」
沈黙。
玉山 「(ブルースリー風に)ハイッター!!!」
遠藤 「え?」
玉山 「あぁ、すみません。これはたまに出る僕の発作なんです」
遠藤 「・・・いや嘘っしょ?」
玉山 「発作なんです。それがたまたま『入った』に聞こえたんじゃないですか?」
遠藤 「いやでも確かに入ったって言いましたよ」
玉山 「(ブルースリー風に)ハイッター!!!」
遠藤 「あーもういいっす、何かさーせん」
玉山 「そ、そんな事より、あなたの今の状況の方がおかしいですよ?」
遠藤 「え?」
玉山 「だって勝手に人の家に上がりこんで。あなたは誰なんですか? 見た感じすごくチャラいし、怪しいんですけど」
遠藤 「そんな事ないっすよ」
玉山 「ちゃんと説明して下さい」
遠藤 「いいっすけど」
玉山 「ではどうぞ」
遠藤 「自分は遠藤保則っす」
玉山 「・・・で、今日はどういったご用で来られたんですか?」
遠藤 「元々ホストやってたんっすけどー俺の超リスペクトする人の紹介で、今はマルチ商法とか詐欺を専門にやってまーす。で、今日も適当にこの辺フラついてたら、この家のイルミネーションがやたらとチカチカしてムカついたんで、まぁ今からサクッと金巻き上げてやろうと思ってここに来た感じっす」
玉山 「・・・うん、なかなか遠藤さんは懇切丁寧に自己紹介して下さるんですね。しかも詐欺師って言っちゃってるし。今から騙すって言っちゃってるし」
遠藤 「・・・・・・あ!!」
玉山 「時間差すごっ! 今、気付きました? うん、完全に今気付きましたね」
遠藤 「ちょっ、あのっ、今の聞かなかった事にしてくれないっすか?」
玉山 「それは無理です」
遠藤 「お願いしますよー」
玉山 「とにかく僕も忙しいんです。のんびりしてたら帰ってきちゃうし・・・」
遠藤 「ん? 誰が帰ってくるんっすか?」
玉山 「あ・・・(ブルースリー風に)ハイッター!!!」
遠藤 「発作うざ・・・」
玉山 「すみません」
遠藤 「とにかく話だけでも聞いて下さいよ!」
玉山 「遠藤さんが詐欺師だという話は聞きました」
遠藤 「いや、俺は確かに詐欺師っすけど、ビジネスとしてはちゃんと誇りを持ってやってるんっすよ」
玉山 「その無駄な情熱の押し売りはいいですから。とにかくここから早く出ないと・・・」
遠藤 「おすすめしている商品にも絶対の自信があるんっすよ、佐々木さん!」
玉山 「・・・」
遠藤 「佐々木さん!」
玉山 「え、誰ですか?」
遠藤 「誰って・・・あなた佐々木さんでしょ?」
玉山 「(動揺して)あーっ、佐々木ねー。はい、僕は佐々木です。僕は佐々木です。俺はササッキーです・・・ははは、ははは、はは」
遠藤 「何がそんなに面白いんっすか?」
玉山 「うん、全然面白くないですね」
遠藤 「佐々木さん、お願いしますよー。俺、このままじゃ帰れねぇっつーか、あの人の信用なくなったら生きていけねーんっすよ」
玉山 「いや、でも・・・」
遠藤 「この通りっす!!」
玉山 「あの・・・」
遠藤 「(土下座をしようとして)この通りっす!!!」
玉山 「あーわかった、わかりました。・・・じゃあ話だけですよ」
遠藤 「あざーっす」
玉山 「話が済んだらすぐここを出ますからね」
遠藤 「あざ、あざーっす」
上手から登場する佐々木。
ミュージカル調に歌を歌いながら、変な踊りを踊っている。
佐々木「(真っ赤な鼻のトナカイの替え歌)真っ赤な佐々木はー真っ赤な佐々木ー真っ赤な佐々木はー真っ赤な佐々木ー♫ 真っ赤な佐々木はー真っ赤な佐々木ー・・・」
玉山 「間に合わなかったー!! そして予想以上に変人だったー!!」
遠藤 「あのーあの人・・・どう考えてもこの家の人・・・佐々木さんっすよね?」
玉山 「そうだと思います。曲も自己紹介ソングになってるし」
遠藤 「俺、あこまでやってて『藤木』だとか名前が微妙に違ったら、超ムカつくんっすけど」
玉山 「いやーそれはさすがにないと思いますよ」
佐々木「(曲を中断して)佐々木です! (再び歌い始める)真っ赤な佐々木はー・・・」
玉山 「ほらっ、わざわざ複式呼吸使ってるぐらいだから間違いないです」
遠藤 「そっすね・・・あれ、って事は?」
玉山 「どうしました?」
遠藤 「佐々木さんが二人いるって事になりますよね? あ、兄弟っすか?」
玉山 「実はそうなんです」
佐々木「(曲を中断して)違います! (再び歌い始める)真っ赤な佐々木は・・・」
玉山 「(何事もなかったように)佐々木改め、玉山です」
遠藤 「は? 誰?」
玉山 「周りからは玉ちゃんって呼ばれてます」
遠藤 「いやそれはどうでもいいんっすけど、何で嘘ついてたんっすか?」
玉山 「ごめんなさい。実は・・・僕この家に泥棒に入ってました」
遠藤 「え? まじっすか!」
玉山 「はい。で金目の物を探そうと思ったんですけど・・・」
遠藤 「屋敷の中がボロすぎて諦めた?」
玉山 「(頷いて)落ちていた揚げパンに尋常じゃないカビが生えていたのを見て、全てを悟りました」
佐々木の歌が最高潮に盛り上がっていく。
遠藤 「じゃあ、あなた・・・いや玉山さんはここの家とは全く関係の・・・(佐々木に)うっせーな佐々木!!」
佐々木。玉山、遠藤と目が合う。
佐々木「(何かを理解して)あ・・・そういう事!」
ポケットから、糸電話を取り出し耳に当てる佐々木。
玉山 「(ワクワクして)おーっ、すごいっ! あれって糸電話ですよね?」
遠藤 「そうっすね」
玉山 「(ワクワクして)使えるんですかね?」
遠藤 「いや、使える訳ないっしょ? スマホの時代に糸電話って」
玉山 「そっかー残念だなー」
遠藤 「(佐々木を見て)ほら、耳に当ててるだけっすよ」
佐々木「ぷるるるるる、ぷるるるるる、がちゃ」
遠藤 「あ、自分で言うんだ」
佐々木「もしもし、あ、じいや? 今、ぽっくんの部屋にーえっとベストオブふつーな冴えない男と、ホストやってみたけど全く売れませんでしたーみたいな男がいるんだけど・・・あーそうなんだー・・・」
一人でブツブツと話し続ける佐々木。
玉山 「(感動して)すごい・・・糸電話がスマホを超越した・・・」
遠藤 「いや、単純にあいつ一人で話してるだけっす。てか俺たちさりげなくディスられてますよ」
糸電話を再びポケットに入れようとする佐々木。
遠藤 「(佐々木を見て)あー終わったっぽいっすね。そしてその糸電話を再びポケットに入れ・・・入れ・・・入らない・・・上手く入らないから・・・捨てたーーマナー悪っ!!」
佐々木、糸電話を捨てる。
その糸電話を取りに行こうとする玉山。
玉山 「おぉー」
遠藤 「(玉山を制して)はいはい、取りに行かない。虫とり少年じゃないんっすから」
玉山 「すみません、好奇心を抑え切れませんでした」
佐々木「えー何、何、君たちーぽっくんのお手伝いさんなの?」
遠藤 玉山「え?」
佐々木「いやー今じいやに『KAMIKOPPUS3i』でTELしたらさー・・・」
玉山 「おぉーあの糸電話『KAMIKOPPUS3i』って言うんですか? 格好いい!!」
佐々木「すぐ食いつくな君はーすぐーすぐだなー、もうぽっくんの話も無理やり割って入ってくる感じだなー」
玉山 「(瞳を輝かせて)はい」
佐々木「その少年のような目はやめて。うん、ぽっくんは死んだ魚のような目しか持ち合わせてないから、もう溶けちゃいそう・・・ あ! ちょっと溶けた」
玉山 「もう手に入りませんか?」
佐々木「死んだ魚のような目?」
玉山 「違います、あの糸電話です」
佐々木「まぁーあれはプレミアついてるからねーだいぶ高価なものだよー」
遠藤 「超扱い悪かったっすけどね。ほらっ、あこに転がってるっす」
佐々木「そう、そう、で執事のじいやが金持ちのぽっくんに・・・」
遠藤 玉山「???」
佐々木「いや、もう一回仕切り直すね。(喉を調整して)う、うん・・・うん・・・あめんぼあかいな・・・おっけ、おっけ大丈夫・・・(新劇風に)超金持ちで、世界中の金を手の中で転がしている、キングオブ金持ちのぽっくんの為に、新しい執事を二人派遣したって言ってたんだけど、それってつまり君たちの事?」
遠藤 「そんな訳な・・・」
玉山 「あーっ、すいません。少し待ってもらっていいですか?」
玉山、遠藤を手を引き佐々木から離れたところで話し始める。
遠藤 「あいつ絶対貧乏っすね」
玉山 「うん、間違いないです。それに執事とか絶対いないと思います」
遠藤 「そうっすね。世界中の金に転がされてる感、満載でしたし」
玉山 「(どこか腑に落ちず)うーん・・・」
遠藤 「どうしたんっすか?」
玉山 「いや、でも何でわざわざそんな嘘を・・・あ、遠藤さん! とりあえず今は佐々木さんの言う通りにしておいた方がいいかもしれませんよ」
遠藤 「どうしてっすか?」
玉山 「だって僕たちは詐欺師と泥棒でしょ? それがバレて通報でもされたら?」
遠藤 「ホールのクリスマスケーキを、刑務所の中で食べる事になるっす!」
玉山 「あ、そういう感覚なんだ」
遠藤 「それだけは阻止します!」
玉山 「甘党なんですね」
遠藤 「じゃあ、俺たちはあいつの執事のフリをして、その場をしのぐって事っすね?」
玉山 「はい、ただ・・・」
遠藤 「ただ?」
玉山 「それはそれで、いつまで隠し通せるかわからないですよね・・・」
遠藤 「うーん・・・」
玉山 「あ、そうだ!」
遠藤 「どうしたんっすか?」
玉山 「遠藤さんって、詐欺師ですよね?」
遠藤 「そうっすけど?」
玉山 「大体の人なら騙せます?」
遠藤 「まぁ、自信はあるっすね」
玉山 「じゃあ騙して下さい」
遠藤 「誰を?」
玉山 「佐々木さんを」
遠藤 「え? あいつをっすか?」
玉山 「遠藤さんが騙し、そこから動揺を誘い、余計な事を感づかせないようにして、この場から立ち去る」
遠藤 「おーっ、玉山さん、ナイスアイディア!」
玉山 「遠藤さんの詐欺師スキルを頼りにしてますよ。動揺させてやりましょう」
遠藤 「了解っす! じゃあ・・・」
玉山 「じゃあ・・・」
遠藤 玉山「作戦決行!」
お互いに顔を見合わせる遠藤と玉山。
佐々木「終わった、終わった? ちょっと長くない? もうぽっくん待ちくたびれてキリンになるかと思ったり思わなかったりー」
玉山 「すみません」
遠藤 「俺たちはあんたの・・・」
玉山 「(咳払いをする)」
遠藤 「・・・佐々木さんの執事として来ました」
佐々木「そっか、そっかー、やっぱりそっかー。でも主人よりも先に家に入るのはよくないと思うよ。ほらっ、見方を変えれば泥棒とかにも思われちゃうでしょ。だから・・・」
玉山 「(動揺して)そんな事ないですよ、ないですよ、ある訳ないですよ!」
佐々木「また君は食いつくなーすぐだなーすぐーこれから君はあれだ・・・『食いつき君』だな、うん」
玉山 「あ・・・『食いつき君』いいですねーははは」
遠藤 「(小声で玉山に)玉山さん、自分が動揺してどうするんっすか?」
玉山 「(小声で遠藤に)遠藤さんだって『あんた』とか言って失礼ですよ!」
佐々木「あれ? ちょっと待って。ぽっくん鍵かけてたと思うんだけど君たちはどうやって入ってきたの?」
沈黙。
困った表情の二人。
遠藤、破れかぶれで。
遠藤 「主人への愛っす」
佐々木「君・・・」
遠藤 「・・・」
佐々木「わかってんじゃーん」
遠藤 「どうも」
遠藤、玉山にアイコンタクト。
コクリとうなづく玉山。
遠藤 「佐々木さん」
佐々木「どしたの、どしたの?」
遠藤 「少し俺の話を聞いてもらってもいいっすか?」
佐々木「えーっ、どうしよっかなー?」
遠藤 「お金にも関係する話なんですけど・・・」
佐々木「いいよ!」
玉山 「反応早っ!!」
佐々木「で、何の話?」
遠藤 「佐々木さんは最近、何か嫌な事とかってありました?」
佐々木「まぁ、あったよねー」
遠藤 「それは今まで自分が生きてきた中で、一番苦しくて辛い事だと。そう思ってないっすか?」
佐々木「うん、そうだねー」
佐々木「佐々木さんはその苦しみからすぐにでも抜け出したい。そう思ってないっすか?」
佐々木「確かに思ってる、めちゃくちゃ思ってる」
遠藤 「大きな危険を冒してでも、大事な物を守りたい。そう思ってないっすか?」
佐々木「それは・・・あの・・・まぁノーコメント的な・・・」
遠藤 「大丈夫です! そんな悩みは俺の紹介する商品があれば一気に解決します!!」
佐々木「本当に?」
遠藤 「見たいっすか?」
佐々木「あぁ、見せて!」
遠藤 「ではお見せしましょう。その商品とは・・・これでーす」
遠藤、ポケットからペットボトルの蓋を取り出し佐々木に渡す。
佐々木「・・・これは?」
遠藤 「ペットボトルの蓋っす」
佐々木「あの何ていうか・・・」
遠藤 「佐々木さんは今、これがただのペットボトルの蓋だと思ったっしょ?」
佐々木「・・・違うの?」
遠藤 「(遠い目をして)これは宇宙空間で生成されたペットボトルの蓋なんっす」
佐々木「(驚愕して)そんな・・・」
遠藤 「その名もコスモエナジーキャップ。このキャップを指でなでなですれば、その宇宙の未知なるエネルギーをダイレクトに吸収する事ができるんっすよ!」
佐々木「(関心して)すごい!」
遠藤 「どうぞ、好きなだけなでなでして下さい」
佐々木、遠藤から渡されたペトボトルの蓋を撫でる。
遠藤、正面を向き「ってお前かーい!」まで二人を見ない。
遠藤 「どうっすか?」
佐々木「いやー・・・」
玉山、佐々木からペットボトルの蓋を取り上げ撫でる。
遠藤 「感じるっしょ?」
玉山 「(恍惚とした表情で)宇宙の力だ・・・」
遠藤 「いいっすよー自分に素直になって」
玉山 「宇宙の力だ!!」
遠藤 「もっと感情を吐き出して!」
玉山 「宇宙の力だー!!!」
遠藤 「そう、これがあればあなたの悩みなんて一瞬で解決っす!」
玉山 「宇宙の力だー!!!! 買いまーすー!!!!」
遠藤 「まいどありー52万700円っす!」
玉山 「はい、あの分割でお願いします」
遠藤 「ってお前かーい!」
玉山 「え?」
遠藤 「『え』じゃないっすよ! 何のための打ち合わせだったんっすか?」
玉山 「だってすごく魅力的な商品だったし・・・」
遠藤 「玉山さんって純粋っていうか、もうそれを通り越してバカっすよね?」
玉山 「それはちょっと言い過ぎじゃないですか!」
遠藤 「だってこんなただのペットボトルの蓋に50万も払うなんてありえないっすよ」
玉山 「でもそれは宇宙の力が秘められていて、自分の悩みを解決してくれる、ありがたーいペットボトルの蓋なんでしょ?」
遠藤 「いや・・・何て言ったら・・・」
佐々木「食いつき君」
玉山 「はい」
遠藤 「これは宇宙の力なんてこれっぽっちもない、ただの蓋だよ」
玉山 「ガーン」
佐々木「(遠藤に)すごいねー効果音って口からも出るんだねー、音響さんもびっくりびっくり」
遠藤 「何か、さーせん。代弁してもらって」
佐々木「いいの、いいの」
玉山 「僕は今まで何を信じて生きていたんだろう・・・」
遠藤 「玉山さんって、よく騙されるっしょ?」
玉山 「うーん、そうかな?」
遠藤 「詐欺師の俺から見たらすぐわかりますよ、そうやって騙されてお金を吸い上げられるから結局、泥棒なんかに走るんじゃないんっすか?」
玉山 「遠藤さん!」
遠藤 「あ・・・」
佐々木「君たちは泥棒と詐欺師なんですね?」
沈黙。
玉山 「(空気に耐えられず)すみません! 正直に言うとこの家にさっき盗みに入りました。鍵を開けたのも僕です」
遠藤 「何で言っちゃうんっすか!」
玉山 「遠藤さん、もういいじゃないですか」
遠藤 「けどっ!」
佐々木「・・・」
遠藤 「あーっもうっ、わかりましたよ!! 俺もこの家の住人騙して金巻き上げようと思ってました!」
佐々木「そうだったんだね・・・」
遠藤 「警察に通報するんっすか?」
佐々木「いや、しないよ」
玉山 「どうしてですか?」
佐々木「うーん、何か嬉しかったからかな」
遠藤 「泥棒に入られたり、詐欺師に金巻き上げられそうになってるのに嬉しいって・・・佐々木さんドMっすか?」
佐々木「・・・うん、否定はしないというか、比較的気持ちはいいよねー特に言葉責め。こうガンガン来られてるウチに感情が高まるっていくんだよね・・・」
遠藤 玉山「うわーっ・・・」
佐々木「まぁまぁ、ぽっくんの趣味趣向とかの話をすると、クリスマスイブも終わって正月にまで食い込んじゃうから止めまーす。止めっ・・・止めちゃいまーす」
玉山 「自由な人ですね」
遠藤 「そうっすねー心なしか俺、段々慣れてきましたけど」
佐々木「でもさ、でもさ。嬉しかったのは本当だよ。この家に誰かやってる来るなんてほとんどないから。というかすごい偶然だよねーこんなクリスマスイブの夜にさー泥棒と詐欺師と金持ちが集まるなんてなかなかないというか・・・」
遠藤 「佐々木さん、金持ちじゃないっしょ?」
玉山 「むしろ貧乏ですよね? じいやとか嘘ついて・・・」
沈黙。
佐々木「えーーーーっ、何で何で何でわかったの? あきらかにぽっくん金持ちじゃん?」
遠藤 玉山「どこが?」
佐々木「ガーン」
玉山 「おぉー効果音って口からも出るんですね。照明さんもびっくりです!」
遠藤 「あ、そのくだりさっきもう終わったっす」
玉山 「え?」
遠藤 「正確に言うと二回目っすね」
佐々木「いいもん! どうせ、ぽっくんは金持ちじゃないもん!」
遠藤 「いい大人が何、拗ねてるんっすか」
玉山 「確かに」
佐々木「ぷんぷん」
玉山 「あーでも家の中はともかく、外のイルミネーションはすごいじゃないですか」
佐々木「おーっ、食い込み君ーいい感じに食い込んでくるね」
玉山 「食いつきです。って僕が自分で言うのも変な感じですけど」
佐々木「そうなんだーこのイルミネーションは僕の努力の結晶なんだよ」
遠藤 「ここら辺では結構、噂になってるっすよ。この家のイルミネーションが凄いって。まぁ、俺もその噂、聞いてきた部分はあるんっすけど」
佐々木「そっかーぽっくんの知らない間でそんな事になってたんだ」
玉山 「僕、普通に家もすごく大きいし、絶対セレブな家なんだと思ってました」
佐々木「実際セレブ感、出まくってるでしょ?」
玉山 「いやー全くでしたね。せっかく期待して家の中入ったのに、金庫すらなかったし」
佐々木「うん、ぽっくんは金庫にお金を入れない主義だからねー」
玉山 「あーお金自体ないと思うんですけど。あと床に落ちているカビ付きの揚げパンは捨てた方がいいですよ」
佐々木「甘いー甘いなー、ちゃんとルールさえ守れば食べられるんだって。説明しちゃうとですよ、それは三年ルールって言ってね、食べ物が床に落ちてから三年以内に食べれば濃厚な風味とツーンとする匂いが絶妙の・・・」
遠藤 「・・・つーか、何でイルミネーションを家に付けようと思ったんっすか?」
佐々木「え?」
玉山 「うん、それ気になりますね」
佐々木「あーそれは・・・」
突然、黙る佐々木。
遠藤 「さーせん・・・俺なんかまずい事言いました?」
佐々木「いや、いいんだよ」
玉山 「何かあったんですか?」
佐々木「うーん、少し柄にもない事を言うけど笑わない?」
遠藤 玉山「はい」
佐々木「何ていうか・・・寂しかったんだよね」
遠藤 「(爆笑)はっはっはー」
玉山 「遠藤さん」
遠藤 「あ、さーせん」
玉山 「僕も必死で笑うのをこらえてるんです。一緒に頑張りましょう」
遠藤 「はい」
佐々木「何、その連体感?・・・ねぇ・・・何?」
玉山、遠藤、真剣に佐々木の話を聞こうとしている。
それを見る佐々木。話始める。
佐々木「えっと・・・去年の話なんだけど、ぽっくんにも好きな人がいたんだ」
遠藤 「おーっ、やるじゃないっすか」
佐々木「うん。それでその人といい感じになって、一緒に暮らそうって事になって。まぁーぽっくんも尻に敷かれるタイプだから彼女に任せっきりでさー、彼女が紹介してくれたこの家を買おうって事になったんだけど、購入してしばらくしたらいつの間にか居なくなってた」
玉山 「それって?」
佐々木「連絡も全然取れなくなって、騙されたんだろうね・・・ローンの利子がすごい事なってたし、彼女も戻ってこないし、購入したこの家は結局無駄に広いだけで、欠陥だらけ。もう何か一気にやる気がなくなってさーそれが仕事に影響したのかもしれないんだけど、遂には今まで勤めていた会社もクビになってもう最悪。歳も三十超えてるのに何やってるんだーって感じだよね。女の子に騙されて、会社はクビになって借金だけが残る、結果この生活って感じ。完全に負け組だよ。まぁ全部、ぽっくんが悪いんだけどねー」
遠藤 玉山「・・・」
佐々木「だから騙されるって事においては、ぽっくんも食い意地君の事を言えないんだけどさー」
玉山 「食いつきです。何かデブキャラみたいになってますよ」
佐々木「ごめりんこ」
遠藤 「うわーっ、何か超ムカつく」
玉山 「ていうか自分であだ名つけたんだからちゃんと覚えてて下さいよ」
佐々木「ごめうん・・・」
遠藤 「はいはいーそれ以上言わない・・・で、それがどうしてイルミネーションに繋がるんっすか?」
佐々木「だってさーお金もないし、人望もないし、けどクリスマスは近づいてくる。すごく残酷じゃないクリスマスって。リア充はいいよー後で爆発しろーって思いながらぽっくんが丑の刻参りするだけだからさー。けどぽっくんみたいな負け組には辛すぎるんだよね」
玉山 「なるほど」
佐々木「ぼっちは嫌だ・・・ぼっちは嫌だ・・・逃げちゃダメだ・・・逃げちゃダメだ!!」
玉山 遠藤「シンジ君!?」
佐々木「とか思ってるウチにー何かとりあえず派手な事をしようと思って」
遠藤 「それでイルミネーションっすか?」
佐々木「うん、とりあえず女の子にモテたかったんだ」
玉山 「あーでもイルミネーションで女の子にモテますか?」
佐々木「モテるよーモテまくるよー」
玉山 「その経験があるんですね!?」
佐々木「全くございません」
遠藤 「何で地味な知ったかするんっすか」
佐々木「でもさ、でもさー周りよりも目を引くイルミネーションを作ればさー(ギャル口調で)うわー何あれー超キレーもうこれだけ綺麗だったらルミナリエ行くよりよくね? もはやセルフ!! もうセルフナリエじゃね? つーかこんな家って一体どんな人が住んでんだろ? もしかしたら菅田将暉とか小栗旬とか居てたり居なかったりー(元の口調に戻って)・・・みたいに思われそうじゃん」
玉山 「家の中、入ったら時の落ち込み方が凄そうですね」
佐々木「それはぽっくんも自覚してるよ。お金ないしギリギリの生活してるし、少し汚いし・・・」
遠藤 「少しじゃなくてかなりっす」
佐々木「けどやっぱり女の子に振り向いて欲しいというかさ。少しでもいいように見せれば、こんなぽっくんの事も認めてくれるんじゃないかなって」
玉山 「だから自分の事、金持ちだってアピールしてたんですか?」
佐々木「うん。もう家の外観がイルミネーションを取り付けた事によって、大分後戻りできない感じだったからね・・・」
遠藤 「なるほどね」
佐々木「背伸びしちゃった、てへ」
遠藤 「可愛くないっすよ」
玉山 「僕はわかります、女の子の為に頑張ろうって気持ち」
佐々木「食い倒れ君・・・」
玉山 「うん、もう名前は何でもいいです」
遠藤 「玉山さんも好きな女とかいるんっすか?」
玉山 「(照れながら)まぁ、一応います」
遠藤 「そうなんっすか!」
玉山 「結構プレゼントとか送ってて」
遠藤 「へー送るんだ。玉山さんってかなり尽くす方なんっすね」
玉山 「まぁ、どちらかといえば」
遠藤 「週にどれぐらい会ってるんっすか?」
玉山 「あーまだ会った事はないです」
沈黙。
遠藤 佐々木「え?」
玉山 「正直、いつも彼女の事が頭から離れなくて・・・彼女のためなら何でも出来るっていうか・・・」
佐々木「ちょ、ちょっと待って! あの・・・正式名称なんだっけ?」
玉山 「玉山です」
佐々木「あー玉山くんね。えっと玉山くんはその彼女と何で知り合ったの?」
玉山 「マッチングアプリで知り合いました」
遠藤 「あー今、流行ってるっすね」
佐々木「君もやってるんだ?」
遠藤 「まぁ暇な時に少しやるぐらいっすけど」
佐々木「なるほどね。で、玉山君はその彼女とどうやってやり取りを?」
玉山 「いつも電話で」
佐々木「はい、はい。で話している内に好きになってしまったと」
玉山 「はい」
佐々木「そうかーあのープレゼントを送るっていうのは・・・どういう流れか教えてもらっていい?」
玉山 「話している内にねだられちゃうんですよ。それがまた可愛くて」
佐々木「なるほどねー」
玉山 「まぁ、大変な部分もあるんですけどね。正直、彼女の欲しいものを送り続けてたら、お金がなくなっちゃったし・・・」
佐々木「そんなに?」
玉山 「はい。もうカードでもお金を借りれないんで・・・」
遠藤 「もしかして泥棒をやってるのって?」
玉山 「まぁ、それが原因ですね」
佐々木「こりゃ参ったなー参ったなーこりゃ!」
玉山 「けど彼女への僕の気持ちは本物なんです。だから無理矢理にでもお金を作って、彼女に喜んでもらうつもりです」
遠藤 「けど泥棒はダメっしょ?」
玉山 「いや、詐欺師に言われたくないですよ」
遠藤 「は? 喧嘩売ってんっすか?」
佐々木「はいはい、二人とも落ち着いて! あのーちょっと言いにくいんだけど、玉山くんさぁ・・・」
玉山 「はい?」
佐々木「それってまた騙されてると思うよ」
玉山 「そんな事ありません」
佐々木「だってさ・・・」
玉山 「彼女が僕を騙すわけないです」
佐々木「いやーでも・・・ほらー君からも何とか言ってあげてよー」
遠藤 「俺っすか? でも何か玉山さんマジみたいですし」
佐々木「マジはマジなんだろうけど、何かまたそれとは違うっていうか・・・」
玉山 「そんなに疑うんなら今から彼女に電話で聞いてみます」
佐々木「あーやめといた方がいいと思うよ。現実は残酷だとぽっくんは思うなー」
玉山 「ちょっと待っていてください」
玉山、下手へと移動する。
スマホを取り出し、電話をかける。
遠藤のスマホが鳴る。
遠藤 「あ、ちょっと電話いいっすか?」
佐々木「う・・・うん」
遠藤、上手へ。
遠藤、玉山、お互いにスマホの受話器を取る。
玉山 「もしもし」
遠藤 「(女の声で)もしもしー久しぶりー元気だった?」
玉山 「うん、元気だよ。ヤスリんも元気そうだね。今って何してるの?」
遠藤 「(お客さんを見渡し)今はねー大勢の人の前でお芝居をしてる。S・S・Oっていう劇団カンセイの法則がプロデュースしている公演なんだけど・・・」
玉山 「あ、ごめんちょっと電波が・・・何だって?」
遠藤 「ううん、何でもない」
玉山 「そっか。あのーヤスリん」
遠藤 「どしたの?」
玉山 「今日ってクリスマスイブじゃない?」
遠藤 「そうだね」
玉山 「この後ってさ、会えないかな? ほらっ、僕たちって電話やラインのやり取りはしてるけど、まだ会った事ないでしょ? だから・・・」
遠藤 「だーめ」
玉山 「え、どうして?」
遠藤 「だってヤスリん、本当に大事に思ってる人とはすぐに会いたくないの」
玉山 「そっか」
遠藤 「だからもっと玉ちゃんの事を知ってからがいいな」
玉山 「ごめんね、何か・・・」
遠藤 「いいよー。あとね、玉ちゃんお願いがあるんだー」
玉山 「どうしたの?」
遠藤 「誰にも言わないでくれる?」
玉山 「もちろん、誰にも言わないよ」
遠藤 「ヤスリん、困っている人達にお金を寄付をしたいと思ってるんだ」
玉山 「すごいね、いい事だと思う」
遠藤 「けどヤスリん一人では厳しくて、玉ちゃんにお手伝いして欲しいの」
玉山 「いいよ、僕にできる事なら何でも手伝わせて」
遠藤 「やったー玉ちゃん大好き」
玉山 「えへへ。で、どうすればいいの?」
遠藤 「今から言う口座にお金を送って欲しいんだ」
玉山 「いくらぐらいかな?」
遠藤 「50万ぐらいあれば助かるんだけど」
玉山 「50万だね。わかった、すぐ振り込むよ」
遠藤 「ありがとうー玉ちゃん大好き」
玉山 「えへへ。人として当然の事をしただけだよ」
遠藤 「さすが玉ちゃん! みんな喜んでくれると思う」
玉山 「そっか、嬉しいな。その寄付金は何に使われるの?」
遠藤 「えっとねー何でもそのお金が集まれば、最終的に宇宙の力を解放できるようになるんだって。すごいよねー」
玉山 「そうなんだー宇宙の力かー」
遠藤 「それでね、最近では宇宙空間で作られるペットボトルの蓋があるらしいんだけど・・・」
玉山 「その話、詳しく聞かせて!」
二人のやりとりをずっと聞いていた佐々木。
佐々木「うん、現実は残酷だね・・・」
遠藤 「じゃあねーまた連絡するねー」
玉山 「じゃーねーあ・い・し・て・る」
遠藤 「ヤ・ス・リ・ん・も」
電話を切る二人。
佐々木の元へ。
玉山 「やっぱり僕は騙されてなかったです」
佐々木「そっかーよかったねー」
玉山 「遠藤さんも電話ですか?」
遠藤 「俺もちょっとマッチングアプリで色々あったんすよ」
玉山 「へーやりますねー」
遠藤 「なかなかハマるっすね、いいカモがいて金も巻き上げれそうっす」
玉山 「アプリででも仕事をするなんてすごいですね」
遠藤 「職業病って奴っす」
佐々木「えーみなさん、世の中には知らぬが仏という言葉があってですね・・・」
玉山 「どうしたんですか? 佐々木さん?」
佐々木「何でもないです」
玉山 「そうだ! 遠藤さんはどうして詐欺師になったんですか?」
遠藤 「え? 俺の話はいいっしょ?」
玉山 「僕も佐々木さんも自分の話をしたんだから」
佐々木「確かにその経緯はぽっくんも気になるなー」
玉山 「遠藤さん、お願いします!」
佐々木「お願いしまんにゃわ!」
遠藤 「(まんざらでもなく)仕方ないっすね、少しだけっすよ?」
玉山 「やった!」
遠藤 「えっとー二人に質問なんっすけど、俺って女と遊んでるように見えます?」
佐々木「見える」
玉山 「見える」
沈黙。
佐々木「ぽっくんがその理由を説明するとですねー大人の男の勘というか・・・」
遠藤 「実はこう見えて俺、一途なんっすよ」
佐々木「そうなのー!!!!!」
玉山 「意外ですねー遠藤さんチャラいけどイケメンだし、モテると思うんですけど」
遠藤 「モテます」
玉山 「あ、否定はしないんだね」
遠藤 「でも好きになった女には一直線っす」
玉山 「へーじゃあ遠藤さんにも今、好きな人がいるんですね」
遠藤 「はい、俺に今の仕事を紹介してくれた人なんっすけど、その人のためなら何でも出来るっす」
佐々木「あれ? 何か聞いた事ある台詞だなー」
玉山 「その気持ちわかるなーで、どんな人なんですか?」
遠藤 「アミさんって言うんっすけど、何つーかこの人は俺の事全部わかってくれるんっすよねー」
玉山 「アミさんかー」
佐々木「え、今なんて言った?」
遠藤 「はい?」
佐々木「だから今、なんて言ったの?」
遠藤 「えーその人のためなら何でもできる・・・」
佐々木「じゃなくて名前!」
遠藤 「・・・アミさん」
佐々木「・・・」
玉山 「どうしたんですか?」
突然、深呼吸を始める佐々木。
佐々木「ぽっくんのー物語完結2ページ前によるーー高速質問ターイム!!」
玉山 「うわっ、何か始まった・・・」
佐々木「質問させてもらっていいかな?」
遠藤 「どうぞ」
佐々木「アミさんは自分の事をアミーゴって・・・」
遠藤 「言うっす」
佐々木「寝ている時、半目を・・・」
遠藤 「開けてるっす」
佐々木「左の胸にほくろが・・・」
遠藤 「あるっす」
佐々木「ぽっくんが騙された女だー!!!」
遠藤 「まじっすかー!!!」
玉山 「そこだけ聞くとすごい女の人ですね!!」
消沈する遠藤と佐々木。
佐々木「こんなところにまで被害が及んでいたとは・・・」
遠藤 「けどまだ俺が騙されてるって決まった訳じゃないっしょ? この仕事を紹介してくれた時も俺の事を本当に理解してくれてたし、好きだって言ってくれてたし・・・」
玉山 「稼いだお金はどうしてたんですか?」
遠藤 「彼女の口座に振り込んでました・・・」
玉山 「振り込むのはダメですよー絶対。振込はダメ!」
佐々木「うん、うん、ま、いいや。とにかく現実から目を背けちゃダメだよ、現実背け君!」
玉山 「すぐにあだ名が決まりますね」
遠藤 「じゃあどうすれば?」
佐々木「彼女に電話をして、現実背け君の疑問をぶつけてごらん?」
遠藤 「俺はアミさんの事が好きっす・・・騙されてなんか・・・騙されてなんかないっ!!」
電話をかける
遠藤 「・・・」
遠藤、佐々木に電話を渡す。
遠藤、電話を耳に当てながら、
佐々木「おかけになった電話番号は現在使われて・・・使われて・・・(感極まって)使われて・・・」
遠藤と佐々木、無言で暑い抱擁を交わす。
玉山 「あのー結局、僕以外のお二人は騙されてたって事ですよね」
佐々木「おまっ、お前! もう知ーらない、あえて何も言ってやらないからな」
玉山 「何の事っすか?」
佐々木「この公演が終わった後、じっくりと苦しむがいい。ガハハ」
遠藤 「あー詐欺師の俺が騙されてたなんてダッセー・・・」
佐々木「もういいじゃん、いいじゃん! 騙された女の事は忘れよ」
遠藤 「それはわかってるんっすけど、なかなキツイっすねー」
玉山 「(時計を確認して)もうこんな時間か。世間はクリスマスで楽しんでるんだろうな」
佐々木「そうだ! せっかくだしさ男だけでパーッとクリスマスパーチーしようよ!」
玉山 「おーっ、いいですね!!」
遠藤 「佐々木さん、それなら俺、今日はベロベロに酔っ払いますよ!!」
佐々木「うん、酔っ払うのはいいんだけど会費はきっちり割り勘ね」
玉山 「ケチくさいですねー」
佐々木「仕方ないでしょーお金は消えるけど家のローンは消えないんだから。あれ? ちょっとぽっくん今、かなりうまい事言った? ねぇ、ねぇ?」
遠藤 「言ってないっすよ。てかさっさと乾杯しましょう」
玉山 「そうですよー」
佐々木「いやー乾杯っていっても、シャンパンとかそんな高価なものはうちにはないからねー」
玉山 「じゃあなんでパーティやろうって言い出したんですか?」
佐々木「ノリ」
玉山 「適当だなー」
遠藤 「仕方ないっすねーコンビニに買いに行きますか!」
玉山 「そうですね」
佐々木「あーっ、でも、でも、クリスマスケーキはありまーす!」
遠藤 「まじっすか?」
玉山 「もうー早く言ってくださいよ」
佐々木「しばらくお待ちくださーい!」
下手へとはけていく佐々木。
三人分のケーキを持って再び登場。
玉山 「おーっ、本当にでてきた」
遠藤 「クリスマスって感じっすね」
佐々木「いやねーこのケーキ本当に美味しいの。ぽっくん、めっちゃおすすめ! 乾杯する前に一口だけ食べてみて」
玉山 「そこまで言うなら・・・」
遠藤 「はい」
一同 「いただきまーす」
一同、ケーキを食べ始める。
遠藤 「うん、何か味が独特っすねー」
玉山 「確かに、濃厚な風味とツーンとする匂い・・・」
佐々木「でしょ、でしょーそれ三年前のケーキだから、かなり熟成されてるんだよねー」
沈黙。
遠藤 「俺、帰るっす」
玉山 「お世話になりました」
佐々木「あれ・・・どした? まだ乾杯してないじゃん」
遠藤 玉山「よいお年を」
遠藤、玉山、上手へとはけていく。
佐々木「ちょっと待って! (キムタク風に)ちょっ待てよ!! いやごめんなさい、すみません、本当に待って下さい! もっとイルミネーション増やすから、いい男になるから、ねぇ、ねぇ、友達になってよー!!!!!!」
佐々木、続いて上手へとはけていく。
エンド
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